音楽で「即興演奏」というとすぐにジャズを思い浮かべる人が多いでしょう。実際にジャズは楽譜に固定された音符ではなく、その場・その瞬間で生まれてくる音を大切にします。
ジャズ以外に即興演奏がないのかというと、そうではありません。ジャズほど複雑ではありませんがブルースやロックなどのポピュラー音楽にもありますし、クラシック音楽の延長線上にある現代音楽にもたくさん即興性や偶然性を重視した作曲法が導入されています。
ジャズは即興を重視する音楽ですが、でたらめな即興というわけではなく、それなりのルールがあります。普通はリズムをキープした上で、コード進行やモード(音旋法)にもとづき、そのなかで使える音(available notes)を選択しながら演奏します。当然、調性は保たれます。
リズム、コード進行、調性など、すべてのジャズルールから自由になったものが、フリージャズと呼ばれるものです。
私は朗読との共演からスタートして、ジャズの手法をさらに進めて、非ジャズ即興演奏をおこなうようになりました。フリージャズとも違います。リズムを使ったり使わなかったり、コード進行があったりなかったり、調性があったりなかったり。つまりすべての制約をはずすのではなく、選択肢を広げることで自由になる手法です。
これを書きながらいま驚きつつ思ったんですが、ひょっとしてこのような非ジャズ即興演奏をやっているのは、日本では私だけかもしれません。世界のことはわかりませんが。