2011年12月27日火曜日

おばかな顕在意識と利口な潜在意識

顕在意識とは「自分がなにを考えているのかわかっている意識」のことです。
 潜在意識(無意識)とは「自分がなにを考えているのかわかっていない意識」のことです。これはフロイトにより「発見」されたとされ、その最初の著書『夢判断』で明らかにされました。が、最初はまったく注目されず、『夢判断』も1899年に出版されて以来、6年間で351部しか売れなかったそうです。私としてはなんだか親近感を覚えますが。
 自分自身をじっくりと観察してみるとすぐにわかることですが、私たち人間は「自分が意識してやっていること」と「自分が無意識にやっていること」の両方があります。そして前者はとても限定されていて、後者はほとんど無限といっていいほどさまざまな行動パターンがあることがわかります。
 私たちはなにかものごとを考えるとき、生まれ育ったり、社会生活をいとなむ課程で習得してきた思考パターンを使ってしまいます。朗読するときのことを考えてみましょう。
 夏目漱石の『吾輩は猫である』を朗読するとします。あなたはほぼ自動的に「夏目漱石という文豪の有名作品を読むのだ」という思考にとらえられます。その思考にとらえられたまま読みはじめると、「夏目漱石らしく」「猫らしく」読もうとして、本来のあなたらしい読み方はどこかに行ってしまいます。この「漱石らしく」読んでしまおうとする思考パターンを捨てることは、けっこうやっかいです。なにしろ強力に刷りこまれていますから。
 このとき、顕在意識の思考パターンを捨て、潜在意識に朗読を任せることができたら、そこにはまったくとらわれのない、自由な、本来のあなたらしい表現が生まれてくることでしょう。

 潜在意識は非常に処理能力が高いのです。顕在意識は一本の思考回路をたどたどしくたどることしかできませんが、潜在意識は同時にいくつもの思考処理ができます。「直感」に判断をまかせたとき、たいがいうまくいくのは、この潜在意識がいい仕事をしてくれたからです。もっとも、この直感も、潜在意識の声に耳を傾けることに堪能でなければ、なかなか正常に働いてくれることはありません。
 思考能力を高める、とは、顕在意識における論理的な思考能力を高めることではなく、潜在意識を開放して自在に思考させてやり、その結果を無意識の暗闇の奥から上手にすくいとる能力を高めることです。
 潜在意識にアクセスするには論理思考や雑念を取りはらっていく瞑想しか方法がありません。瞑想といっても、座禅やヨガのように苦しかったり難しかったりすることではなく、ただ自分の呼吸の観察からスタートして、マインドフルネスの状態を作るだけでいいのです。
 この方法は私なりに、音読療法のなかできちんと体系化することに成功しました。