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即興演奏のエチュード No.1「音を全身にしみこませる」
ピアノにむかってすわります。
鍵盤のどこでもいいので、ひとつ選んで押さえます。
白鍵でも黒鍵でもいいのです。
高い場所でも低い場所でもいいのです。
鍵盤を押さえると音が鳴ります(ピアノとはそういうものです)。
すぐに離さずに押さえつづけます(音をキープします)。
音はだんだん小さくなって消えていきますが、ずっと聴きつづけます。
全身が耳になったような気持ちで、音を全身で受けとめ、味わいます。
音は空気の振動です。
その振動を皮膚で受けとめるような気持ちで、身体のなかにしみこませます。
音がだんだん小さくなっていって、最後には完全に消えてしまうまで、聴きつづけます。
ピアノにはペダルがついている。
古いピアノだとふたつ、新しいピアノだとみっつある。
デジタルピアノだとひとつしかないかもしれない。
いきなりペダルを使ってみることにする。
初心者向けのレッスンだと、ペダルを使うようになるのはかなり演奏技術レベルがあがってからだ。
たとえばバイエル教本などではペダルは使用しない。
ペダルを使うようになると、かなり高度なレベルになったような気がしてうれしかったりする。
しかし、即興演奏法では最初からペダルにしたしんでおきたい。
使うのは一番右の「強音ペダル」(ダンパーペダルともいいます)だ。
ピアノは通常、すべての弦がダンパーのフェルトで振動しないように押さえられていて、鳴らした弦だけがフェルトが浮いて音が持続するようにできている。
ダンパーペダルを踏むとすべての弦が「開放」され、鳴らした弦の音がすべての弦にも「共鳴」する。
ひとつの音がふわっと広がりのある音になる。
また、そのまま別の音を弾きつづけると、前の音が消えずに残ったままつぎつぎと音が重なっていく。
ダンパーペダルを多用しすぎると、音が濁って聴きづらくなることもある。
いまはひとつの音だけをできるだけ持続させるために使う。
ペダルを踏みこみ、鍵盤をひとつ押してみる。
さきほどとは違った響きになるはずだ。
そして持続時間も長くなるだろう。
よりじっくりと音を味わえる。
こうしてまずはじっくりと音を味わう、自分の身体全体で音を受けとめる感受性を育てる、これが即興演奏においてとても大切な入口なのだ。