2013年1月5日土曜日

音楽演奏の世界に踏みだすということ/即興演奏のエチュード「音を味わう」

photo credit: Woman of Scorn via photopincc

音楽演奏を習いたいと思ったとき、みなさんはどうするだろうか。たとえばピアノ演奏の場合。

大人の場合は近所の楽器店や音楽教室をたずねて、大人のためのピアノ教室みたいなところに行くだろう。
子どもの場合もやはりそのような教室に行かせることになるだろう。
ほかに選択肢はないように見える。

親しい知り合いや家族にピアノの先生とか演奏家がいれば、直接その人に習おうとするかもしれないが、そんなのはまれなケースだ。


さて、ぶじにピアノ教室を見つけて、ピアノ教師を確保したとする。
つぎはどうするだろうか。
楽譜の読み方を教わるだろうか。
鍵盤のドレミの場所を教わるだろうか。
運指を教わって、ドレミの音階を弾く練習をするだろうか。

いずれにしても、ピアノ演奏にかかわる「技術」を、難易度のひくい順番に教わっていくだろう。
うまくすれば数か月後には簡単な曲のひとつもたどたどしく弾けるようになるかもしれない。
ポピュラーピアノを教えてくれる先生についたなら、左手でコードを押さえ右手でメロディを弾くというような演奏のしかたをおぼえて、半年くらいで2、3曲は弾けるようになるかもしれない。

へたくそな演奏も何か月、何年とたつうちに、多少は人に聴かせられるレベルになっていくかもしれない。
が、もっともありそうなのは、日々の反復練習につかれていつしかピアノから遠ざかり、二度とピアノにさわらない生活にもどってしまうことだ。
だっていくら簡単な練習だからといって反復練習ほどつまらないものはない。
そして、現状の演奏習得の方法としてはこれ以外の方法はまずないのだ。
もちろん自分で自由に即興演奏したり、耳おぼえのある曲にとっさに伴奏をつけて歌う人と楽しんだり、ほかの楽器との合奏を楽しんだり、というレベルにたっするにはかなりの年数と根気を必要とする。


これとはまったくちがうアプローチの演奏習得法はないものだろうか、と私はかんがえてきた。
そしてそれを見つけた、とおもう。
それを今年の音楽塾で実践していこうと計画しているのだが、どういうふうにやるつもりなのか、その一端をこのブログでときどき紹介してみようとおもう。

まったくの初心者がピアノに向かったとき、まずやってほしいことがある。
それは、ピアノという楽器がどのような音を出す楽器なのか、じっくりと味わってほしい、ということだ。
スケールなど弾けなくてもいい、ドレミの位置などわからなくてもいい、しかしとにかく鍵盤に指を置きさえすれば音が鳴る、というすばらしい楽器なのだ。

トランペットやフルートやバイオリンなどは、音を出すだけでもひと苦労だ。
ましてや美しい音色を出そうとおもうと、どれだけ鍛錬しなければならないか。
プロの演奏家ですら、音色の追求は一生ものだろう。

ピアノに音色の追求がないとはいわない。
もちろんある。
が、とりあえずは鍵盤を押さえれば、だれでもそれなりのきれいな音が出ることは事実だ。

どこでもいい、まずは鍵盤の好きな位置に指を置き、鍵盤を押しさげてみよう。
音が出た。
さて、それをじっくりと味わってみよう。
文字どおり、音を食べるように、自分の身体のなかにいれていくように味わってみる。
全身で味わってみる。
全身が音を味わう舌になったかのように、その音を味わって身体のなかにしみこませてみる。

これが音楽演奏のスタート地点だ。
あなたはもう演奏のスタート地点に立っている。
いや、すでに一歩踏みだしている。
さて、つぎはどうする?