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共感的コミュニケーションとの出会い
共感的コミュニケーションのベースとなっているNVCのことを最初に知ったのは、2007年のことだった。
私が主宰している現代朗読協会ではさまざまな講座を開催していたが、そのうちのひとつのアレクサンダーテクニーク講座があった。講師は安納献で、私とはもともと音楽仲間のつながりで知り合ったのだった。
彼はとても勉強熱心な人で、アレクサンダーテクニークのインストラクターの資格を取得したあと、カルフォルニアでNVCのリーダーシップ・プログラムを受講していて、その体験を私にも伝えてくれたのだ。
現代朗読協会で行なわれていたアレクサンダーテクニーク講座の終了後、安納献が自主的にNVCについて紹介したり実践練習をしたりする機会を作ってくれて、NVCを学ぶことができた。
この方法について、私は最初はおもしろいと感じつつ、自分が使えるようになるかどうかについては懐疑的であり、やや距離を置いていた。しかし、ここにはなにかあるという直感があり、ずっと気にしつつ、マーシャル・ローゼンバーグの著書を少しずつ読んだりしていた。また、日本でもNVCの勉強グループがあって、それにもあまり積極的ではないにせよ参加はしていた。
日本のNVCグループは国際公認トレーナーを次々と招聘していて、彼らと接することも私の意識を少しずつ変えていた。
フランソワ・ボーソレイユ、ジェシー・ヴィーンス、キャサリン・キャデン、ロクシー・マニング、ホルヘ・ルビオといったトレーナーが次々とやってきて、スリリングなワークショップを実施してくれた。とくに私にとって重要な転機となったのは、2011年のホルヘ・ルビオの来日だった。
ホルヘは随分おちゃめなトレーナーで、その遊び心のある茶目っ気とユーモアが私の性質にしっくり来た。そして、なんとなく距離感があったNVCを、一気に自分自身の身体感覚に近づけてくれた。
「こんな風にやってもいいんだ」
という目からウロコ的な自由奔放なNVCの方法を見せてくれたのも、私にとってはインパクトが大きかった。
ホルヘを招聘してくれたのも安納献で、ホルヘが来る前から、
「きっと水城さんはホルヘと気が合うと思うな。絶対に会わせたいと思ったんだよね」
といってくれていた。
いまさらながら安納献には感謝したい。
ちなみに、安納献は2012年にマーシャル・ローゼンバーグの著書を翻訳監修して『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法』(日本経済新聞社)という本を上梓している。
ところで私はNVCの公認トレーナーでもないし、リーダーシップ・プログラムにも一度も参加していないが、自分なりにNVCを研究し、噛みくだいて共感的コミュニケーションという体系にまとめることができたと思っている。なにより、共感的コミュニケーションについてかんがえたり実践したりする時間が他の人よりケタ違いに多いと自負している。現代朗読協会で、音読療法で、そしてそれらの講座やゼミや出張先で、身体的・精神的状況がさまざまな人に、ときにはひとりずつ、ときには大勢を相手に。そしてときには深刻な不安や暴力を抱えている人の相談相手になることもある。
共感的コミュニケーションはなによりまず、自分自身の人間関係を劇的に変えてくれたし、日常生活の風景が明るく変わった。そして、組織運営にも大きな力を発揮している。
この方法が多くの人に役立ってもらえるといいと思って、以下に具体的な方法を述べていく。