2012年1月31日火曜日

音読療法の特徴

photo credit: h.koppdelaney via photopin cc

BLOG記事のコメントやメールなどでしばしば問い合わせを受けるので、この際、きちんと書いておきたい。

まず、「朗読療法」と「音読療法」はどう違うのか、という質問について。


朗読療法を提唱している方の著書やウェブサイトを確認したかぎりでは、当方の音読療法と内容が少し違うようだ。

朗読療法は朗読すること、朗読を聴くことなどによって「癒し」を得るものと理解できる。音読療法は呼吸・声など自分の身体を使って自分自身で心身ケアができるという特徴がある。ボイスセラピストはそのお手伝いをする。


「音読療法」は医療行為なのか。それとも民間療法なのか、という質問について。


音楽療法やアートセラピーなどもそうだが、音読療法は「代替医療」もしくは「補完医療」という位置づけである。つまり医療行為そのものではない。

医療を補完するもので、また予防効果や日常の健康法としても大変有効なものであると認識している。


以下、私が考える「音読療法」の特徴を書いてみた。


音読療法は音楽療法や箱庭療法、アートセラピー、漢方医学、アーユルヴェーダ、カイロプラクティック、その他さまざまな代替医療(alternative medicine)のひとつである。これを補完医療(complementary medicine)、または補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine : CAM)ともいう。

古くから伝統医学、民間療法としていろいろなものが存在するが、近年は音楽や絵画表現、森林浴、瞑想などを用いた補完代替医療(CAM)が多く生まれている。

音読療法はクライアント自身の呼吸と声を用いることに最大の特徴がある。そのため、いつでも、どこでも、なにも道具を使わなくてもおこなえる、という利点がある。もちろん療法士が方法を指導することでより効果を高めることができるが、ひとりでもおこなえるところに手軽さがある。

音読療法では、ヨガ、禅、古武術、合気などのさまざまな呼吸法を取りいれ、現代人が手軽に、しかも効果的におこなえる方法としてそれを整備している。発声や音読も、この呼吸法の延長線上でおこなわれる。呼吸と自声に意識を向けていくことで、容易にマインドフルネスの状態にいたり、自分自身のことについての多くの気づきを得ると同時に、自分を苦しめる思考やイメージの反芻パターンから離れることができる。

音読療法の最大の特徴は文章の音読によって自己セラピー効果を得ることにある。この場合の文章は文学作品であることが多いが、必ずしも決められた作品でなくてもかまわない。自分が考えたり書いたりしたものではなく、他人が書いた文章を使う、というところが重要である。そのメカニズムについては本文中で詳しく述べるが、自身の外部から挿入された言葉やイメージを音読によって繰り返すことで、自己内部の雑念や特定の感情をそれに置き換え、手放すことができる。結果的に深い瞑想と同等の効果を得ることができる。


筆者はごく若いころから音楽演奏を職業としていたほか、二十代なかごろからはラジオ番組の制作、そして小説執筆と、音と言葉の世界に深く関わりつづけてきた。とくにここ十数年は音読・朗読の研究を進め、多くのアナウンサー、ナレーター、声優、歌手など声の表現のプロのほか、それをめざすアマチュア、あるいはプロ・アマを問わず音声表現を生き甲斐とする多くの人と濃密に関わっている。その過程で、声と呼吸、そして言葉と文章が、人の生理や心理に大きな影響を及ぼすことを観察してきた。

音読療法はこの観察と試行の結果として生まれたものを、だれもが利用できるように体系化したものである。