2012年1月2日月曜日

映画「第9地区」を観た

なぜだか全然アンテナに引っかかってこなかったんですが、年末になにか映画でも借りて観ようと思って iTunes Store を眺めてみました。
 SFな気分だったので、ジャンルを絞って見ていたら、この「第9地区」が目にとまりました。タイトルがいい。そして、あらすじを読むと、南アフリカのヨハネスブルクの上空に突然現れた巨大宇宙船、その下に作られたエイリアンたちのスラム街、といった設定がかなり変で、恐るおそる観てみることにしました。
 というわけで、前評判などの事前の情報は一切ありません。

 始まると、なんだかゆるい感じのキャラクターのおっさん(これが後で主人公だとわかるわけですが)がエイリアンを別の地区に引っ越しさせるための大規模作戦の責任者として、テレビカメラに向かってその意気込みを語る、というシーンから始まります。
 それで、彼が勤めるコングロマリット(あとで兵器製造もしているとわかる)の非情そうな重役やら、傭兵部隊やらが出てきて、エイリアン地区に乗りこんでの強制移住作戦が始まります。このあたり、まだなんとなくゆるい雰囲気を、もちろん意図的にかもしだして進んでいきます。
 ところが、あるシーンから「あれ?」という疑念とともに緊張感がじわじわと巧妙にしかけられていき、気がつくと一瞬たりとも画面から目が離せない展開に引きずりこまれてしまったのです。

 色っぽい美女も出なければ、もちろんロマンスもない。かっこいいヒーローもいない。というより、主人公はむしろ利己的でかっこ悪い、へなちょこなホワイトカラー。だれかとの熱い友情物語もなければ、感動的なラストシーンもない。しかし、それ以外は全部ある、という、まさにてんこ盛り映画なのです。
 すごいCGはあるわ、スプラッタシーンはてんこ盛りだわ、糞尿ゲロまみれだわ、あげくにガンダムみたいなロボットまで出てきて、ロートルSFファンにとってはスターウォーズからエヴァンゲリオンまですべてカバーしていると思えるコテコテの映画なのです。
 ストーリー設定は南アフリカだけあって、ちょっとアパルトヘイト問題をきっかけにしているような狙いはあるものの、ことさらに気にする必要はありません。
 なにがこの映画の魅力なんだろう。結局、普通の人間を特殊な状況に放り込むことによって卑劣な部分も含めて全部正直に描いているところかなあ。それをサービス満点の映像で商業的にも成立させている、という。
 ともかく、年末にとんでもないものに遭遇しちゃった、という感じです。