沼袋にある〈ちめんかのや〉という一風変わったスペースでおこなわれたコンサート。
これが楽しかった。
中村さんは現代曲を多く弾くピアニストだが、今回はトイピアノ。
アメリカのシェーンハットというメーカーのトイピアノで、150年前にドイツ移民によって創業されたメーカーとのこと。
ちょっとだけ鍵盤に触らせてもらったら、ものすごく繊細なタッチで驚いた。
私が持っているのはKAWAIのトイピアノだが、まるで違う楽器だった。
いや、KAWAIが悪いといっているわけじゃないよ。
「違う」ということ。
そしてバイオリン。
安田さんは初めて聴いたが、手練である。
とくに繊細なビブラートのコントロールは素敵だった。
曲によって、また曲の進行によって、あるいは一音一音、ビブラートのコントロールを微細に変化させ、音にスリリングな表情をつけていく。
ときにはノンビブラートも使う。
ふたりのコンビネーションも楽しかったのだが、もちろんトイピアノの演奏が楽しかった。
いつもは横を向いて演奏しているピアニスト(グランドの場合は/アップライトだと背中)だが、トイピアノはオーディエンスに正面を向けて演奏する。
そのことでふいに「あがってしまった」と中村さんが告白された。
チャーミングな人なのだ。
スペースの雰囲気もよかった。
地下の秘密の場所といった、親密な雰囲気がかもしだされて、音の響きもおもしろい。
始まったとき、トイピアノのきらびやかな音色がきつすぎる、と感じたのだが、すぐにそれもなくなった。
古楽からヘンデル、バッハ、そしてサティやケージや現代曲まで、曲目もバラエティに富んでいた。
とにかく、おふたりが楽しそうに演奏されていたのが印象的だった。
ちょっといい気分で沼袋をあとにした。
このセットは23日に伊勢の現代美術館でもおこなわれるとのことだった。
お近くの方はどうぞ。