2011年11月8日火曜日

映画「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」を観た

原題は「Genius Within - The Inner Life of Glenn Gould」。
 平日の午後ということもあって、こんな映画、だれが観に来るんだろう、きっと席はガラガラに違いない、と思っていたのに、行ってみたらほぼ満席でびっくりしたのです。
 渋谷のアップリンク。女性客がほとんどで、しかも中高年が多い。が、男性や若い人もちらほらいます。こんな地味なドキュメンタリー映画に人がはいるというのは、思ったより日本の民度は低下していないということなのか、あるいはグールド人気はあいかわらず根強いということでしょうか。

 映画そのものはそれほど感銘を受けるような内容ではありませんでした。前半の記録映像は大半が「グレン・グールド 27歳の記憶」やDVDなどで観たものです。
 この映画のキモは、グールドの女性関係にスポットをあてたことで、その女性たちをはじめとする実在の人物相手にあらたにインタビュー映像を撮っていることでしょう。私はほとんど知らない話でしたが、いっしょに行ったグールドファンは本などで知っている内容だといってました。
 晩年の孤独や、孤独のなかで残された音は、さすがにグッとくるものがありました。とくに、グールドの名を世界に知らしめたバッハの「ゴールドベルク組曲」の1982年録音のものは、CDで何度も聴いているのに、あらためて映像とともに聴くとそれはそれは美しく、心に染みるものでした。あのような音の、たったひとつでいいから、鳴らすことができれば満足かも、とピアノを弾く人間のひとりとしては思いました。

「天才」というのは、私たちには手が届かない存在ですが、それに感情移入できるのはどういうことでしょうか。
「天才」であれ、そもそも人間であり、苦悩を抱えて生きていた(いる)という点に共感するのでしょうか。
 あさって、私は〈Com.Cafe 音倉〉でピアノを弾きますが、ちょっとグレン・グールドのことを思いながら弾いてみようかなと思ったりしてます。
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