「朗読は身体表現である」という考え方のもと、現代朗読協会のゼミやワークショップではかなり身体作りや、自分の身体への意識を高めることをやってきた。
やればやるほど、滑舌だのイントネーションだの日本語発音規則だのといった口先の技術をやるより、身体の使い方を変えることで劇的に朗読が変わり、表現の質があがっていくことがわかってきた。
もちろん、口先の技術をまったくやらないわけではないけれど、それは朗読表現にとってまったく本質的なものではない、という立場をとっている。
呼吸、姿勢、そして身体使い、これらに意識を向け、身体表現としての朗読を深めていくことで、非常に質の高い表現者が次々と生まれてきている。
昨日のゼミは、とくに月に一回「部活編」と称して、フィジカル面を強化する日だった。
昨日はまず座学で胸郭と腹部の構造、筋肉と骨格の基礎知識を解説したあと、呼吸と姿勢筋のいわゆるインナーマッスルを鍛えるプラクティスを全員でやった。
そのあと、バランスボールを使ったエチュード。
バランスボールに座ってもらい、私がテキストを持って、それを読んでもらう。その間、私はすこしずつテキストを動かし、読み手の姿勢が変えてもらう。身体がねじれたり、仰向いたり、うつむいたり。その身体に意識を向けながら読んでもらう。
次に、テキストを自分で持ち、バランスボールの上で自由に動きながら読んでもらう。
最後に、バランスボールの上で動いていた自分の身体の感覚を保持したまま、普通に椅子にすわって読む。
全員、驚くほど朗読が変わるのだ。そしてその変化は、なにか作り上げられたくまれた変化ではなく、ごく自然な、本来その人が持っているのびのびとした読みへの変化となっていて、とても楽しい。読んでいるほうも楽しいという。
このエチュードでなにが起こっているかについては、もう少し検証してみようと思っている。