2011年4月5日火曜日

東京電力福島第一原発の現況とこれから

しばらく原発について書いていなかったが、ひさしぶりに書く。
というのも、一週間くらい前に「収束方向が見えてきたか?」という覚え書きを掲載したのだが、収束するどころか、事態は迷走をつづけているからだ。重大な事態のニュースも、毎日見ていると、いつしか麻痺してしまい、スルーするようになってくる。
事態はなにも好転していないという事実を踏まえて、注視をつづけていく必要がある。

ここ一両日は高濃度汚染水が海に流れこんでいること、低レベルの汚染水を海に放水すること、などが目立ったニュースとなっている。また、海洋汚染、漁獲類の汚染が注目されている。
が、まずはやはり原発施設がどうなっているのか、という基本的なことを把握しておきたい。

東京電力福島第一原発には全6機の原子炉がある。
このうち、4号機、5号機、6号機は地震・津波発生時には定期点検中で、炉心に核燃料は入っていなかった。が、冷却系統がすべて津波で失われたため、冷やしつづけなければならない使用済み燃料プールも冷却水が送れなくなり、加熱が起こった。
このうち、5号機と6号機は外部電源が接続され、プールの冷却もおこなわれ、「冷温停止」つまり安全な状態となっている。
4号機は、一時、使用済み燃料プールの温度があがり、水位がさがったために燃料棒が露出し、そのために発生した水素によって建屋が大きく破損した。しかし、そのおかげで破損した建屋の隙間からコンクリートポンプ車によってプールへの注水がおこなわれ、これも現状では安定している。

1号機から3号機は地震・津波発生時に運転していたが、自動停止。しかし、津波によって冷却系統がすべて失われるという重大な危機におちいった。
炉心の温度があがり、水位が減少して燃料棒が露出。これら3機の燃料棒はすべて破損したと考えられる。そして1号機と3号機は水素爆発によって建屋が大きく損壊した。
2号機は建屋は大きくは破損していないが、高濃度の放射性物質が流出していることから、燃料棒の破損程度がもっとも重大だと考えられる。

原子炉の中心部にある圧力容器は、これが破損すれば溶融したウラン燃料がそのまま流出するが、圧力がある程度安定に保たれていることを見れば、重大な破損は起こっていないと考えられる。が、高濃度の放射性物質が出ていることから、とくに2号機は圧力容器の下部の構造物が破損し、漏れだしているものと思われる。
いずれも燃料棒は約半分が露出した状態でいちおう安定を保っている。
その外側にあって放射性物質の大気中への拡散を守っている格納容器だが、1号機から2号機まで破損の疑いが持たれている。これはかなり重大な事実だ。

いずれにしても、炉心の冷却は継続しなければならず、そのためには注水を続ける必要がある。
が、圧力容器および格納容器の破損部分から水が漏れだしており、それが原子炉建屋とタービン建屋、および外部施設にまで流れている。これをなんとかしなければ冷却系の復旧作業に手をつけられない状況がつづいている。

現在は汚染水をどうやって排水するかという問題が前面にある。
地下の汚染水を復水器に汲み上げようとしているが、そのためにはまず復水器の水をどこかにやらなければならない。復水器の水を外部タンクに移そうとしているが、そのタンクの水を先にどこかに移さなければならない。
タンカーなど大容量の設備を利用することも考えられている。が、その設備にしても、高濃度に汚染された水をいずれは処分しなければならないわけだ。処分方法も問題になるだろう。

第一原発からは大気中に比較的低濃度の放射性物質が、海水中へ高濃度の放射性物質が、いまも出続けている。
これらをどうやって止め、閉じ込めるのか。各国から専門家の支援が入っているようだが、まだ出口は見えていない。
被曝放射線量は「累積」で考えなければならない。一刻も早い効果的な対策をしてほしい。