私にもちょっとわからないのだが、原発内部の放射線モニターが突然とんでもない値を示したかと思うと、数値が出てこなくなり、故障とか、ねつ造しているのではないかとかいう情報が流れたりしている。
周辺のモニターレベルには大きな変化はないので、故障で止まっているのではないかと思うが、原因が地震だとすると脆弱すぎる。
ともあれ、注視が必要。
さて、原発の現況については、内部関係者情報と一次情報、それとそれを元にした原子力工学と原子物理学者による分析などを、注意深く拾っている。
現況。
福島第一原発の1号機と2号機(とくに2号機)の圧力容器になんらかの損傷があって、溶融した燃料が漏れ出していることはほぼまちがいない。
ときおり再臨界が起こっている可能性は否定できない。専門家のなかには再臨界を否定している人もいるが、出ている放射性物質の種類から再臨界が起こっているとしか説明できない、と主張している人もいる。
いずれにしても、高濃度の放射性物質が一次冷却水とともに格納容器外にまで漏れだしていることは確かで、再臨界がある/なしは重要ではない。再臨界=核爆発という幼稚な知識が出回っているが、それはありえない。現況での再臨界というのは、いってみれば熾き火がブスブスとくすぶっている状態だ。
原発から出てくる放射性物質は、現在、3系統ある。
ひとつは、冷却水を注水する際に、圧力容器および格納容器の内部圧力を逃がすためにベントによって大気中に放出されている水蒸気に含まれているもの。
これは(語弊をおそれずにいえば)大きな線量ではないが、いま問題になっている野菜や土地や大気の線量はこれが由来だ。
ふたつめは、高濃度に汚染された一次冷却水の漏れによるもの。
これは海に流れこんだことが重大視されているが、まったくそのとおりで、話にならないほど高濃度の汚染水だ。流出は止まったとされているが、いまも大量に建屋地下にたまっている以上、どこかに移したとしてもすぐになくなるわけではなく、将来にわたっての土壌汚染などが問題になるだろう。
みっつめは意図的に放出した低濃度の汚染水。かなり問題になっているが、高濃度汚染水に比べれば微々たる汚染度だ。全部放出したとしても、高濃度汚染水の17リットル分くらいにしかならないといわれている。
現在、東芝本社内に「廃炉」工程の作業チームができていて、アメリカの専門家チームと共同作業が進められているようだ。これは日本のマスコミでは報道されていない。
石棺方式ではなく、水棺方式が検討されているという話もある。格納容器内をすべて水で満たして、何年かにわたって崩壊熱を除去していく、その後で核燃料を取りだす、というものだ。
いずれにしても、完全な収束までには10年単位の時間が必要だろう。
その間、放射性物質がいくらか出てくる可能性は消えないと思う。もっとも、汚染水以外の経路で今後大量に、爆発的に「大気中」に出てくる可能性は少ない。とはいえ、少しずつでも出ているので、半減期の長い放射性物質が蓄積されていけば、作物、漁獲物、土壌、水、そして人などに与える影響はけっして楽観視できないものだといえる。