2012年6月3日日曜日

音読療法士は24時間の仕事

photo credit: mon of the loin via photo pin

先日、こういうことがあった。
私がみているクライアントのひとりから真夜中に電話がかかってきた。彼女はパニック障害があり、困ったときにはいつでも連絡していいよといって電話番号を伝えてあるのだ。

以前にも一度かかってきたことがあって、そのときはパニックによる過呼吸(過換気ともいう)状態だった。
経験のある人ならわかると思うが、パニック障害による過呼吸が起こると頭のなかが真っ白になり、身体の自由もきかず、このまま死んでしまうのではないかという強い不安に襲われる。
こういうときは、声かけと、過呼吸による脳内の過酸素状態を取りのぞいてやる処置(鼻と口にビニール袋をかぶせるなど)をしてやる。

彼女の場合は電話をかけることができたということで、軽度の症状だったので、こちらのいうことがある程度伝わって理解できると判断し、声をかけてやり、息を吸いすぎないようにまずは息を止めることができるかどうかやってもらい、できたら息を吐き、さらに吐くことに意識を向けていけるかどうか、そして音読療法でいうところのボトムブレッシングという呼吸法まで持っていけるかどうか、試してみた。

幸いうまくいって、すぐに落ち着くことができた。
パニック障害には呼吸法がかなり有効なのだ。
また、パニック障害の人は自分がいつまたパニックに陥るのか不安にさいなまれることが多いが、そういう精神状態のときにも呼吸法が有効だ。
また、パニックが起こりそうなきざしを察することができるときがあるが、すぐに呼吸法をやることで事前にパニック症状を押さえこむこともできる。

先日かかってきたとき、過呼吸にはなっていないが、とにかく不安や精神的圧迫にさいなまれて、なにも話せず泣きじゃくっている状態だった。
そういうときは時々声をかけてやりながら、相手が落ち着くのをのんびり待つ。こちらがのんびりしているのが伝わると、相手もやがて落ち着いてくる。
落ち着いて話ができる状態になったら、共感的コミュニケーションの手法を使って相手の話を聞く。

これは認知行動療法という手法にも近い。
パニック障害や不安障害、そして軽度の鬱病にも、認知行動療法は大変有効であることがわかってきている。


電話がかかってきたとき、私は熟睡中だったのだが、パニックを起こしている相手の声を聞いてすぐに対応した。
パニックに襲われたとき、療法士にしか連絡できないという人は、家族や友人関係に問題を抱えている人が多い。
つまり、療法士以外のだれにも救いを求められなくて、やむにやまれず連絡してくる。

療法士はそういったクライアントに対して24時間対応できるようにしておきたい。
などと書くと、そんな大変な仕事はしたくない、と思う人がいるかもしれない。
が、実際には、電話対応はほんの数十分のことだし、相手が落ち着き、こちらに感謝してくれながら電話が終わったときは、こちらにも相手の役に立つことができたという満足感もある。

またこの時間は仕事であり、自分の技術を使った処置の時間でもあるので、その時間に対してはクライアントに所定の金額を請求もできる。
そして金額設定をすることは、クライアントが必要以上の依存性をこちらに持たないための方策でもある。
つまり、療法士とクライアントという枠組みのなかで対応しているんですよ、という意識をクライアント側にも持ってもらうために、料金請求は重要なのだ。

ともあれ、音読療法士というのはしっかりした知識と技術と経験に裏付けられた立派な仕事であり、まただれとも雇用関係のない独立した仕事であり、そして大きな社会貢献ができる仕事であるということで、胸を張りたい。
そのためにはかなりの覚悟をもって資格取得に取りくんでいただきたいと思っている。