いま、国立西洋美術館でやっているベルリン国立美術館展に、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」が初来日しているらしいが、この映画は首飾りではなく「耳飾り」のほうだ。
以前、Tracy Chevalierが書いた「Girl with a Pearl Earring」という小説を読んでいて、10年以上前のことだと思う。
Tracy Chevalierは合衆国生まれの作家で、現在はロンドンに住んでいるらしい。
2003年に映画化され、フェルメールのこの絵も一躍有名になった。
この絵が描かれたのは1665年か1667年と推定されているが、確かなことはわからない。
フェルメールは1675年に破産同然で死んでいる
映画でもフェルメールの金銭的苦境はしばしば描かれている。
主人公の少女役はスカーレット・ヨハンソン。
フェルメール役がちょっとかっこよすぎるんだけど、コリン・ファース。
監督は「羊たちの沈黙」のピーター・ウェーバー。
恋愛映画として宣伝されたようだが、けっしてそうではない。
たしかに思春期の少女の繊細な心の動きや、男たちとの微妙な関係も出てくるが、フェルメールは彼女に恋心を抱いているようには演じられていない。
表面的に見るとそのように思えないこともないが、フェルメールが彼女をじっと見つめる眼はあくまで描く対象を切望する画家の眼であり、恋情ではない。
しかし、彼の妻は誤解してしまうのだ。
というところが、この映画のミソ。
とにかく画面がすばらしい。
フェルメールの絵の色や構成を意識しているのはもちろんだが、計算しつくされた動きや構成、セットなど、ため息が出るほど入念に作りこまれている。
古い映画作りの手法を踏襲しているが、そのもっとも完成された形のひとつといえるだろう。
そしてやはりスカーレット・ヨハンソンの抑制のきいた演技。
周辺のキャストもとてもいい。
蒸し暑い夏の夜に見るのにおすすめかもしれない。