ツイッターでなんとなく目について、なんとなく気になったので、Amazonで注文してそれをつぶやいたら、作曲者ご本人からリプライをいただいてびっくりした。
それはともかく、本が今日届いたので、さっそく弾いてみた。
ピアノ曲集なんて買うのは何十年ぶりだ。
ピアノを習っていた子どもの頃は、レッスンで習う課題曲以外にも、いろいろと自分で好きな曲を買ってきては弾いていた。
たいていが一曲いくらで買える全音のピアノピース曲だった。
難しい曲にも挑戦して、ひとり悦に入ったりしていた。
この『夢の中の夢』に収録されている曲は、全然むずかしくない。
むしろやさしい曲ばかりで、多少譜が読める人ならほとんど初見で弾けるだろう。
やさしい曲ばかりなのだが、とても味わい深い音が、そっと大切に集められている、といった印象の曲集だ。
現代においてピアノ曲を書くというと、ついつい難曲になりがちだったり、多くの音を重ねがちだったり、複雑な構造を持たせてしまったりと、いわゆる「足し算」的な作曲になりそうだが、樹原さんはそこのところをとても抑制して、コントロールしている。
むしろ音を引いていって、必要最小限の音を、必要最小限の「動き」に抑えて、空間の広い響きを作っている。
これはピアノ弾きには楽しい曲集だ。
これを弾いていると、広いホールにおかれたグランドピアノに向かいたくなる。
その一方で、最初の曲「笑顔」などは、家庭に置かれたアップライトでも充分に楽しめるだろう。
だれを相手に弾くか、ということにもよる。
よい聴き手がほしくなる曲集ともいえる。