photo credit: Pamela Machado via photopincc
「口はどこにある?」とたずねると、ほとんどの人が自分の唇を指さす。
そこは口ではなく、口先。
そんな意識でいると、口先だけの朗読表現になってしまうぞ、と私は冗談半分で警告するわけだが、あながち冗談ばかりではない。
正面から見た顔の絵を描くと、口はたしかに唇の位置にあるし、鏡で顔を見ることが多いのでそのような認識になってしまいがちなのだが、口はもっと奥のほうへとつづいている。
頭を横から見てみると、口は唇、歯、口腔、舌、喉頭、そして気道へとつづいている。
口の上にはさらに鼻腔という大きな空間もあり、これも言葉を発することに深く関係している。
朗読では言葉の輪郭(滑舌ともいう)を明瞭にしたり、逆に不明瞭にしたり、といったコントロールをおこなうが、そのためには口の使い方にたいする意識が必要だ。
言葉が不明瞭だったり、さ行、ら行など特定の音節が苦手だったり、子どもっぽい発音だったり、といった人は、自分の口の使い方の意識を高めると有効だ。
唇はもちろん、口の開き(これはおもに顎の上下の開き)、鼻への音の抜け、舌の動き、口腔内の空間の使い方など、言語表現者なら当然、繊細な意識でそれらをコントロールできるようにしたい。
ところが、上記のようなわけで、自分の口にたいする意識はなんとなく前のほうにかたまっている。
奥まである口の構造全体にたいする正確なイメージを持つことが大切だ。
口という構造物は頭部の下部前方の大きな体積を締め、複雑な構造を持っている、そのことをきちんと意識することが必要なのだ。