2010年7月21日水曜日

朗読の快楽/響き合う表現 Vol.19

アイ文庫の朗読研究会では、だれからも影響も教えも受けず、純粋に自分たの試行錯誤だけで「朗読とはなにか」について考えと実践を深めていった。その過程で、より深い表現力を身につけるためには「ライブ」が有効だ、ということがわかってきた。

研究会でも、実は自主的に何度かライブイベントを開催していたのだ。豪徳寺の酒屋の地下スタジオはかなり広く、30人くらいのキャパのライブは楽にやれたのだ。そこでいくつかのライブをやっていた。怪談やら短いものを集めた企画もののライブなどだ。

また、実際にお客さんを集めてのライブは手間がかかるというので、ネットライブもやることになった。livedoorのねとらじ担当者と知り合いになったので、専用チャンネルをひとつもらった。このライブ活動がみんなの力になり、また私自身の朗読に対する考えを深めた。

ネットライブは月に1、2回のペースで頻繁におこなった。そのつどテーマを設定し、出演者たちにはそのための演出研究会に出てもらった。この時期から、朗読研究会をアイ文庫という営利企業(といってもほとんど利益はなく借金ばかりだったが)から独立させる機運が出た。

あてにしていたオーディオブックコンテンツがあまりにお金にならない、ということもあった。どうせ朗読がお金にならないのなら、いっそ営利をめざすのではなく、社会的な活動として自由におこなっていけないか、と考えたのである。NPO法人というものがあった。

特定非営利活動法人といって、調べてみると、非営利目的ではあるが活動に必要な資金を稼いではいけないということではないようだった。実際にNPO法人でかなり稼いでいる団体もあるようだった。NPO法人は自治体からの認可が必要なのだが、申請が面倒だった。

とにかく、書式が決まった書類を何種類も準備しなければならず、苦労して書いて提出しても、「、」や「。」一個違っているだけで突き返されたりする。わかってしまえばどうってことはないのだが、なにしろ初めての申請作業だ。そういうことを手伝ってくれるNPOがある。

NPO法人を申請するための書類を作ってくれるNPO法人なのだが、その手数料がばか高いのだ。お金がある団体や忙しい人はそういうところを利用して難なく許認可を取ってしまうのだろうが、我々はばか高い手数料を払う余裕はなかった。だから自分たちで苦労して申請した。

こうやってなんとか東京都から認可がおり、2006年3月に特定非営利活動法人現代朗読協会が誕生した。このときに劇団みたいに旗揚げ公演をやることになった。演目は「おくのほそ道異聞」で、芭蕉の「おくのほそ道」を下敷きにした群読パフォーマンスだった。

朗読研究会から現代朗読協会の正会員になったメンバーを中心に、ゲストに古くからの共演者・榊原忠美や、彼が所属する劇団にいた水谷友子を迎えた。また、音楽陣として盲目のサックス奏者・ウォルフィーと歌手の伊藤さやかも入れた。私もピアノ演奏で出演した。

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