2011年3月29日火曜日

原発ニュースの読み方/放射性物質はどのように漏れているのか

(決まり文句ですが)
以下に書く意見は、あくまで私個人の見解であり、専門家の裏付けをもらったものでもない。が、一般の方よりはいくらか原発のことに詳しい一個人の意見として参考になるのではないかと思い、流すものである。

福島第一原発から放射性ヨウ素や放射性セシウムといった放射性物質が漏れているのは衆知のとおりだが、昨日はプルトニウムも敷地内から検出された。
重大な事態なのだが、この事態の全体像を、原発の仕組みをざっくりと把握することで理解しておきたい。
注意すべきは、放射性物質がどこからどのように漏れているのか、という点だ。

原子力発電所は炉心でゆっくりと核分裂反応を起こすことで熱を作る。その熱で水を沸騰させ、タービンを回す。
沸騰させる、といっても、やかんでお湯を沸かすようなものではない。数十気圧という超高圧の水蒸気を作り、その莫大なエネルギーで巨大なタービンを連続的に回しつづけるのだ。
核反応は原子炉建屋内で起こり、タービンはタービン建屋内にある。
原子炉建屋内の構造をざっくりと把握しておきたい。

核分裂反応を起こす核燃料は酸化ウランのペレットで、それはジリコニウムという薄い金属の筒の中にはいっている。細長い棒状の燃料棒が垂直に並べられていて、その隙間に制御棒という核分裂反応を制御するための棒が挿入されている。
制御棒を引きぬけば核分裂は促進され、挿入すれば抑制される。
これらは「圧力容器」という鋼鉄の、いってみれば圧力鍋のような入れ物に中に収納されている。
圧力容器はさらに「格納容器」という、これもある程度の圧力に耐えられる容器のなかに収納されている。

現在問題になっているのは、炉心の燃料棒を完全にひたしておくべきはずの一次冷却水が、冷却系の機能喪失によって目減りし、燃料棒が露出してしまったことだ。
露出した燃料棒は一時的に加熱し、相当な高温になったものと思われる。高温のジリコニウムは水蒸気と反応し、水分子を酸素と水素とに分解する。酸素はジリコニウムと結びつき、水素は気体となる。
その水素がなんらかの経路で圧力容器から、さらには格納容器の外へと漏れだして引火し、1号機と3号機では建屋の上部構造を吹っ飛ばした。2号機では格納容器下部の構造物サプレッションプールに損傷を与えた(と思われる)。

圧力容器や格納容器で圧力が設計限界を超えて高まってくると、内部圧力を逃がさなければ容器が破損してしまう。なので「ベント」という圧力弁を開放する作業をおこなって内部の圧力を下げてやるわけだが、なんらかの理由でこの弁が破損したのではないかと私は見ている。弁が正常な状態なら、水蒸気はいったんフィルターを通って、排気棟から外に出ていく。
が、今回は弁が動かないかなにかして、緊急に破壊して開放したのではないか。でなければ、炉心から出た水素が建屋内にこもる理由がわからない。
2号機では大気中に出る放射性物質を少しでも減らすために、水蒸気をサプレッションプールへと導き、水を通してから外に出そうとしたようだ。結果、サプレッションプールに水素がたまって、爆発破損したのだろう。
上記のような事態に間違いないとすると、格納容器まで損傷を起こしているのは2号機ということになる。

いま放射性物質は3つの経路から出ていると考えられる。
ひとつめ。
ベント作業による減圧作業によって大気中に出ている放射性物質。これは比較的少量だろう。事故の初期から観測されている比較的ゆるやかな放射線量の値は、ここからの値と思われる。
ふたつめ。
やはり冷却系が失われた使用済み核燃料プール内で、冷却水が蒸発して露出してしまった核燃料棒が、やはり熱もしくは建物の構造物が落下するなど別の理由で破損し、核燃料が直接大気に触れてしまっている、という経路。
みっつめ。
おそらく2号機だが、破損した格納容器から高濃度の放射性物質を含む一次冷却水が直接漏れだし、地下構造を伝わって拡散している経路。これは昨日、トレンチという建屋外の施設にまで漏れだしていることがわかり、大変な問題になっている。また、プルトニウムも検出されたことも、ここの問題だろうと思う。

さて、今後のことだが、福島第一原発の向かうべき道すじはとても限定されてきているように思う。
長くなったので、これについては項をあらためることにする。
いずれにしても、昨日書いた記事を参考にしていただいて、観測されている放射線量の値に注意していてほしい。
昨日書いた記事「原発ニュースの読み方/いつ逃げるべきか(あえて書く)」はこちら