2011年10月25日火曜日

実は年寄りより若者のほうがリズム感が悪い?

 ここ何年かのあいだにうすうす気づいていたことですが、いよいよはっきりしてきました。
 朗読のワークショップで、時々、拍手や歩行などでリズムを取ってもらいながらテキストを読みあげるエチュードをすることがあるんですが、どうもこのときに若い世代の人々がルズムがうまく取れないことが多いのです。
 そんなはずはない、と思っていました。なぜなら、若い世代は生まれたときからリズムのある音楽をたくさん聞いているし、カラオケやライブ演奏に触れる機会も多いでしょう。音楽を体感し、リズムを取りながら聴いたり歌ったりする機会が多く、リズム感も古い世代より相当発達しているはずだ、と思っていました。
 ところが、実際には違っています。若い世代ほどリズムを取りながらテキストを読みあげたり、あるいは「弱起」のような変則的なタイミングの取り方がへたなのです。
 その原因を考えてみました。彼らが聴いてきた音楽はポップスやロック、歌謡曲など、一定のビートを刻むものが多かったはずで、そのせいで逆にリズム感が貧弱になっているのではないか。
 リズム感というのは、一定のビートを刻むことも必要ですが、揺れ動くリズムを感じたり、変化するリズムに即応して自分も呼応していけることも必要です。また、おなじ拍のなかでビートを3や4に刻み変えてみたり、といったことにも対応できることも必要です。一定のビートに乗ることばかりしてきた彼らは、おそらくリズム感覚を麻痺させている/楽させている/甘やかしてきた、のではないでしょうか。そのために、複雑なリズムや揺れ動くリズムに呼応できないのです。
 いうまでもなく朗読は揺れ動くリズムです。音楽でいえば、民族音楽やクラシック音楽が近いでしょう。すぐれた朗読者はすぐれたリズム感の持ち主でもあります。しかしそのリズム感は、決して一定のビートを刻みつづけられる「正確さ」で表現されるものではありません。
 朗読に限らず、音楽だってそうでしょうね。一定のビートだったら機械に刻ませておけばいいんです。そのほうがよほど正確ですし。人間にしか表現できない微妙に揺れる、スイングする、変化するリズム感。そういったものを、朗読者もミュージシャンも養うといいのではないでしょうか。
 ロックやポップスばかりでなく、クラシック音楽や民族音楽を聴くことをおすすめします。