2014年3月15日土曜日

中村和枝+河合拓始ピアノ連弾コンサートを聴いてきた

昨夜は両国の〈門天ホール〉まで「中村和枝+河合拓始ピアノ連弾コンサート Vol.4」を聴きに行ってきた。
〈門天ホール〉は一昨年に門前仲町に〈門仲天井ホール〉としてあったものが閉館し、両国に移転して再オープンしたホールだ。
以前の門仲ホールはビルの最上階にあって天井も高く、「ホール」という風情もあったよい箱で、私もいずれは一度演ってみたいと思っていた場所だっただけに、閉館は残念だった。
あたらしい門天ホールはホールという風情はあまりなく、箱としての魅力はかなり欠ける印象があったが、しかし昨夜のコンサートの内容はそれをカバーしてあまりある楽しいものだった。

中村和枝さんと河合拓始さんの連弾コンサートは、私はこれが二度めとなる。
前回も楽しかったが、今回はさらに現代音楽に的を絞りこみ、タイトな演目をバラエティ豊かにならべて充実した内容だった。

和枝さんが正直に明かしていたけれど、どの演目もたくさんの練習を要する難曲で、わざわざ河合さんが在住している福岡まで練習に出かけたらしい。
そしてどの曲も、現代音楽と「ピアノの連弾」という特殊な演奏スタイルの可能性を感じさせてくれる、興味深いものだった。

私の好みの話になってしまうが、二曲めに演奏された山本裕之氏の「土耳古行進曲」は、非常に重厚なえぐい曲で、最初の音からぐいっと引きこまれ、最後の一音まで一瞬たりとも気をそらすことができない求心力を持った曲だった。
この方の曲は、たしか、トロンボーンの村田厚生さんのコンサートのとき、曲名を失念してしまったが、トロンボーンをデチューンすることによってピアノとの気持ちわるい音律差を作り、あたかもピアノの調律が狂っているかのような船酔いのような感覚をオーディエンスにもたらすおもしろいものがあって、きっと私の好みにしっくりくるのだろう。

もちろんそれだけでなく、河合拓始さん作の「何#3」、原田敬子さんの「4 Hands for a grand piano」、渡辺俊哉さんの「透かし織り」という繊細極まりない曲、平石博一さんのミニマル的なアプローチでありながらアイディアの玉手箱のような作品「アップ・トゥ・デイト」、そして伊左治直さんの「機関二人猩々」という新作初演曲など、いずれも次から次へと大変楽しく、和枝さんと河合さんの工夫と苦労のあとがいっぱい感じられたコンサートだった。

終わってから飲み物がふるまわれ、演奏者、作曲者、参加者と自由な交流の機会が作られたことも楽しかった。
こういうオープンな場で交流することの苦手な私なのだが、コンサートの内容に押されてめずらしく何人かの方と興味深く話をさせてもらったのが楽しかった。
和枝さん、河合さん、関係者のみなさん、おつかれさまでした。
そしてありがとうございました。