商業出版社に依存しないインディペンデント作家として、電子出版とオンデマンド出版の試みを続けてきたが、かなり有望なサイトが出現したので、実際に使ってみることにした。
サイトは「BCCKS」というところ。
ここでは本のデータをエディタに流しこみ、まずは電子本を作る。ブラウザベースなのでいまのところはあまり複雑なことや、きめこまかな指定はできない。その点、InDesignなどで作るPDFデータとは違う。しかし、このサイトの利点はたくさんのプラットフォームに対応していることだ。MacやWindowsなどのコンピューター端末はもちろん、iPhoneやアンドロイド、各種タブレットにも対応している。
もっとも、ローカルにダウンロードできないので、厳密にはコンテンツとしての電子書籍ではない。閲覧書籍とでもいうべきだろうか。しかし、いったん閲覧書籍を作ったら、それをそのまま紙の本としてオンデマンドで印刷製本の依頼をかけ、一週間くらいで完成品が手元に届くというのがすばらしい。
この手のサービスはオンデマンドといいながら版下制作にお金がかかったり、最低印刷部数が決まっていて少部数だとかなり割高だったりと、手軽に使えるところがなかった。しかし、BCCKSは一冊からでもかなり安価で発注できるので、個人ユーザーにとってはかなり使い勝手がよさそうだ。
今回作ってみたのは、ブログで毎日連載している「音読日めくり」の一ヶ月分をまとめて『音読ひめくり 四月』として本にしたものだ。
手順としては、表紙、背表紙、裏表紙などのデータや画像を流しこみ、本文と挿絵を流しこみ、文字の大きさなどを指定し、最後に目次や奥付を整える、といった感じで、すべての作業はブラウザベースのオンラインエディタ上でおこなう。
これが最初は慣れるまでちょっと面倒かもしれない。また、見出し文字の大きさを変えられないとか、テキストの画像に対する回りこみ指定ができないなど、いくらか不満は残るが、利便性のほうが上回っている。
完成した電子本は、そのまま公開して、オンラインで販売できる。印税率は70パーセント。『音読ひめくり 四月』は300円に設定してみたので、1冊売れると私には210円はいってくることになる。
そして、紙の本の発注。
これもそのままサイトから簡単に発注できる。決済はクレジットカードほか。
今回は文庫本サイズの指定で、挿絵があるからフルカラー。仕上がりページ数は96ページ。価格が1,376円。これを実際にいくらで売るかについては、こちらの裁量となる。1,600円くらいかなあ。文庫本サイズとしては高価だが、フルカラーだし、なにしろオンデマンド本だ。安価なほうがよければ電子本のほうを読んでもらえばいいのだし。
また、ダウンロードできる電子コンテンツとしての『音読ひめくり 四月』は、あらためてPDF出稿し、パブーなどで販売する予定だ。
というわけで、私としては長い間待ちのぞんでいたインディペンデント作家の試みが、いよいよスタートしたことになる。
初の試みとなる『音読ひめくり 四月』は、こちらから閲覧できます。