2011年9月18日日曜日

石村みか主演・扇田拓也演出「空のハモニカ」を観てきた

下北沢「劇」小劇場に、演劇ユニットてがみ座第五回公演「空のハモニカ」を観てきた。
扇田拓也くんが演出で、石村みかさんが主役の金子みすゞを演じている。
連日の盛況で今日も満席と聞いていたし、2時間を超える上演時間なので、少しおっくうな気持ちもあったのだが、見終わってみたらそんな気持ちは吹きとんでいた。
演出がすばらしい、石村みかがすばらしい、ほかの役者も、舞台装置もすばらしい。私がこれまで観たストレートプレイのなかでベストにあげられる出来だった。

これの前にはザ・スズナリで少年王者館の公演を観て、小劇場公演っぽくぎゅうぎゅうに詰めこまれ、ほとんど身動きできずに、膝の悪い私はおおいに難儀したのだが、今日は比較的席をゆったり取ってくれていて、楽に観られたのもよかった。お客さんに高齢者が多かったが、それに配慮したのかもしれない。

それにしても、扇田くんの演出は本当にすみずみまで行き届いていて、繊細で、しかもアイディアがいっぱいだった。シンプルな装置だったが、それを効果的に使い、役者が行き交うとともに時制が行き交い、複雑ではあるが、けっして難解というわけでもない。
セリフまわしにも、「そのセリフをそのようにいわせるんだ」という意外性をたくさん含ませて、たぶん多くの観客は気づかないのかもしれないが、アンビバレントな表現がステージに厚みを与えていた。
そして石村みかの身体性のすごさ。
小劇場演劇の完成の極地を見せられたように思う。
演劇をやっている人はこれに対抗するのは大変だろうなあ。こちらは朗読であり、また「作り込むステージ」とは対局にある「偶有性のステージ」の方向性で心底よかったと思った。