こちらでのこのセットはこの日が2回めであった。
この日は土曜日で、午後に東京創造芸術祭参加作品の稽古をかねた昼ゼミがあったので、午後5時すぎにそのメンバーを含む何人かでゾロゾロと白楽に向かった。
午後6時すぎ、白楽に到着。
開演は午後7時である。
出演者である私と野々宮卯妙は先に店入りすることにして、店に向かうがも、ほかの皆さんには開演時間まで白楽の街を楽しんでいただくことにして、別れる。
店の前に行ってみると、別行動をしていた山田みぞれと宮本菜穂子が、手持ち無沙汰な感じで道路にたたずんでいる。
なんと、オーナーの杉田さんがまだ来ていないのだという。
連絡したところ、ビッチェズ・ブリューは通常、7時開店・8時スタートなのだが、今回のみ土曜日ということで時間を早めてもらった、そのことをすっかり忘れていたとのこと。
なんとなく憎めない方なので我々は苦笑いするばかりだったが、待っているあいだ蚊にやられてまいった。
6時40分くらいに杉田さんが到着。
店をあけてもらう。
さっそくいろいろ楽しい話を聞かせてくれる杉田さんのトーク攻撃をかわしながら、マイクや客席のセッティング。
7時前になると知り合いを中心にお客さんがやってきた。
前回はお客さんが3人と寂しかったのだが、今回は店がいっぱいになるほど来てくれた。
けっこう遠方から来てくれた方もいて、ありがたい。
とはいえ、白楽というと世田谷からはかなり遠い印象があったのだが、実際には渋谷駅から26分で着いてしまう。
来月も9月1日におこなうことが決まったので、みなさん、来てね。
さて、7時すぎになって、開演。
となる前に、飲み物のオーダーをとるところでひと騒動。
杉田さんの応答がいちいちおもしろく、大爆笑の渦に包まれ、店ははやくも暖気運転完了。
私がとくに笑っちゃったのは、ビールを飲むのにグラスがいるか、瓶のままでいいか、という問答のあげく、根負けした人が、
「瓶でいいです」
となったのだが、そのあとに出てきたビールは、ひとりがキリン、ひとりがアサヒと、銘柄がまちまち。
これには噴いてしまった。
ライブは私のピアノソロからスタートして、今回のセットリストは次のとおり。
First Stage
1. ピアノソロ「My Favorite Things」
2. 宮本菜穂子「気分をよくして」(作・水城ゆう)
3. 山田みぞれ「ベニテングタケ子の好奇心」(作・水城ゆう)
Second Stage
1. ピアノソロ「我は海の子」
2. 山田みぞれ「女生徒」(作・太宰治)
3. 野々宮卯妙「枕草子」
4. 山田みぞれ「女」(作・芥川龍之介)
このステージの間に杉田さんのトークショーがはさまり、これがまた抱腹絶倒の内容。
くわしくはとても書けないが、ほんとか嘘かわからないような音楽評論家の秘密をたっぷりと聞かせていただいた。
いちおう休憩時間ということになっていたのだが、まったく休憩にはならなかった。
朗読者は今回、メインの山田みぞれのほかにゲストとして宮本菜穂子と野々宮卯妙にも参加してもらった。
宮本菜穂子は私のテキストを団扇に張りつけて、それをひらひらとハンドリングしながら、かろやかに多彩に朗読。
ビジュアルも楽しい朗読だった。
野々宮卯妙は「枕草子」をかなり前衛的に切りこんで、まるで現代音楽のように表現した。
こちらはさすがである。
メインの山田みぞれは衣装に工夫をこらし、いつになくエロティシズム満載で読んでくれた。
アップライトピアノなのでその姿がほとんど見えず、私は大変ストレスがたまった。
が、うまいぐあいにピアニカを持っていってたので、途中からそれを持って動きまわり、しっかりとからませてもらって満足であった。
それにしても、衣装だけでなくその表現の「脱ぎっぷり」はあざやかで大胆、いさぎよさが気持ちよい朗読であった。
終演後、みなさんとの話はさらに盛りあがり、なかなかお開きにならなかったのだが、最近ゼミ生になった山本寿実が来ていたので、ひとつだけ最後にやることになった。
ゼミで聴かせてもらっておもしろかった「風姿花伝」をいっしょにやる。
この人の成長ぶりもあざやかで、楽しませてもらったし、今後も楽しみなのである。
今回はすみからすみまでライブを満喫させてもらって、私は大満足であった。
そしてこの先の大きな可能性を感じるライブでもあった。
私たちの現代朗読にはまだまだ大きな拓けた場所が待っていることがはっきりとわかる。
これからなにが見えてくるのか、非常に楽しみだ。
そして、来月もまたライブの機会をあたえていただいたビッチェズ・ブリューの杉田さんには、深く感謝したい。
来月のビッチェズ・ブリューでの「みぞれみずきライブ」は9月1日(月)、山田みぞれの誕生日の夜に開催することが決まっている。
詳細はこちら。