2010年公開、河瀬直美監督作品。
岡崎の吉村医院という、自然分娩を推奨している産科医院を舞台にしたドキュメンタリー映画で、以前からちょくちょく話を聞いたり、あるいは直接吉村医院と関わっている人たちと交流があったりと、気になっていた映画だった。
ようやく観ることができた。
まず最初にいいたいのは、
「すべての男性にこの映画を観てもらいたい」
ということだ。
少年も青年もおっさんもおじいさんも、未婚も既婚も、全員が観るといいと思う。
命をつなぐ女性という存在の偉大さのほんの一端でもかいま見ることができるだろう。
この映画を観たあと、電車のなかでベビーカーを押しているママにむかって舌打ちするようなやつはいなくなるだろう。
大きなお腹を抱えた妊婦に席が必要かどうか訊かないやつはいなくなるだろう。
そういう映画だ。
しかし、ただ女性賛歌、出産賛歌というだけの映画ではない。
撮影と監督も女性だが、この河瀬直美という人は一筋縄ではいかない。
批評精神がそこここで錆をきかせていて、吉村先生ですら欠点や苦悩をしっかりとあぶりだされている。
ただただ自然分娩サイコー、というようなメッセージは注意深く汚されている。
命がつながっていくことの喜びや大切さと同時に、重さ、苦しさ、複雑さも表現されているこの映画を、すべての男性が観るといいのに、と思ったのだ。