高校のとき、FMラジオでジャズというものを初めて(ちゃんと)聴いた。
NHK-FMで毎週金曜の夜、2時間枠だったと思うが「ジャズフラッシュ」という番組をやっていた。
ジャズ評論家が何人か、持ちまわりで進行を担当していて、それぞれの得意分野のレコードを紹介していた。
それまではクラシック音楽ばかり聴いていたのだが、よく聴いてみるとジャズという音楽は演奏の方法論そのものが違っているらしいことがわかった。
クラシック音楽以外に、世の中にはいろんな音楽があることは知っていた。
田舎の中学生としては、普通に生活して耳にはいってくるのは、流行歌やポップス、演歌、民謡、せいぜい映画音楽やイージーリスニングくらいだった。
そういう音楽にはまったく興味は持てなかった。
クラシック音楽のように緻密に構築されたものではないものは、いっちょまえに演奏者のアプローチで譜面に接している耳にとって、雑に聴こえてしかたがなかった。
しかし、ジャズは違った。
でたらめなようでいて緻密、雑然としているかと思えば整然としたサウンド、そしてなによりリズムが非常にタイトで、これはクラシック音楽にはないものだった。
緊張感のあるリズムとサウンドが、思春期まっただなかの私の好みをとらえた。
私は毎週、ジャズフラッシュの時間を楽しみにし、カセットテープに録音して(当時はエアチェックといった)何度も聴きかえしたり、気にいったものはなけなしの小遣いでLPを買ったりもした。
LPは中学生にとっては非常に高価なもので、ひと月の小遣いでやっとこさ1枚買えればいいほうだった。
ウイントン・ケリーとかMJQとか、一風変わったところでは山下洋輔トリオのフリージャズとかを買った覚えがある。
当然、すりきれるまで何度も何度も聴いた。
いま、そんなふうに音楽を聴く者はほとんどいないだろう(だからどうだということではないけれど)。
ジャズ関連の本も買ったり借りたりして読んだ。
油井正一の『ジャズの歴史』も正座して読んだ(嘘)。
最初はジャズプレーヤーの名前があまりに多すぎて全然覚えられなかったし、演奏を聴いてそれがだれのものなのか聴きわけることなどできなかったが、聴きこんでいくうちにしだいに知識と耳が肥えていった。
◆ピアノ七十二候
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