3枚組で、タイトル通り、マキさんのこれまでの活動の集大成ともいっていい、本人セレクトのベスト盤といっていいだろう。
発売元のユニバーサルミュージックの公式サイトには、このように掲げられている。
デビュー45周年!
何にも縛られず、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドを自在に行き来した歴史の中から、自らがベストチューンを選曲。
自身の半生を振り返るセルフライナーノーツ、未公開写真を含めた究極のベスト!
Twitterでマキさん自身が、ライナーノーツの執筆に力を注いでいるようすをつぶやいておられたので、ライナーノーツを読みながら、全曲を聴いてみた。
いやいや、これは濃いです。
ご本人が「体力がないと聴けないかも」とおっしゃってたけれど、ごもっとも。
かといって、聴くのがつらいわけではない。
一曲一曲にカルメン・マキという表現者の存在感が乗っている濃さと、つぎはどんな曲? どういう選曲と配置をマキさんがしたの? という興味が合わさって、つぎへつぎへと聴いていってしまう。
この選曲と、曲の並べ方、そして写真とライナーノーツの要素が、完全にオリジナルの組CDとしてのコンテンツ性を作っている。
買った人のだれも損をしたとは思わないばかりか、得をしたと感じるだろうね。
3枚組の1枚めは「BLUE Disk」とタイトルされていて、デビュー作から最近のアコースティックな曲まで、マキさんの多彩でありながら一貫した音楽性をもっともよく感じられる選曲になっているように感じる。
2枚めは「RED Disk」とあって、ロックばかり集めてある。「RED」というより「ROCK」もしくは「HOT」と題してもいいような選曲だ。
3枚めは「PURPLE Disk」と題されていて、マキさんのライブに行った方ならよくご存知だろうが、「え、こんな感じのものもやるの?」といった、意外性があったり音楽的広がりをもったり、あるいは音楽というジャンルの枠を超えそうなものまで含まれた選曲となっている。
それぞれにマキさん自身のコメントがつけられていて、それもまた密度が高く、興味をそそられる。
「PURPLE Disk」に私がテキストを書き、豪徳寺のスタジオで即興ピアノとのほぼ一発録りをした「A Red Flower」という朗読が収録されている。
『白い月』というマキさんの朗読と私の即興演奏のみで構成されたアルバムからの選曲だが、選んでいただいてとても光栄であると同時に、マキさんの大胆さに驚いている。
聴いてみればわかるが、これをここに収録するには、かなり思いきった決断が必要であろうことは想像に難くない。
そんなことにもカルメン・マキという表現者の意外性と大胆さ、緻密さがあらわれているように感じる。
音楽活動45年という、この人を抜きにしては日本の音楽シーンは絶対に語れないという重要人物である。
にもかかわらず、現在のマキさんのライブに足を運ぶ人は、私が知るかぎりめちゃくちゃ多いというわけではない。
しかし、このCDを聴けば、かならず「いま」のカルメン・マキを目撃しに行きたくなるだろう。
とにかく一度、このCDを聴いてみてほしい。
絶対に損はないから。