『生物と無生物のあいだ』『世界は分けてもわからない』『動的平衡』と読んできたが、福岡伸一の本はいつもおもしろい。
やや文学的に走りすぎる感はあって、きっとロマンチックな人なんだろうと思うけれど、このストーリー仕立ての感じが、科学者の書く文章の独特な冷たさというか「臭さ」から離れて、科学者でない者にとってはちょうどいい。
サイエンス・フィクション(SF)というジャンルがあるけれど、この人の書くものは「サイエンス・ミステリー(Science Mystery)」とでも名付けたくなる。
この本は分子生物学の発見、男を女ではなく男にする秘密の鍵「SRY遺伝子」について、スリリングなミステリーを読むように楽しめる。
『できそこないの男たち』福岡伸一/光文社新書