現在は活動を休止しているが、2007年から2008年にかけて永倉秀恵というすばらしい歌手のサポートをしていた。多くの曲を提供し、ともにライブを行なったりもしたのだが、その過程でひとつの曲が生まれた。
「ここへとつづく道」という、アイルランド民謡から触発されて生まれた歌詞とメロディを持つ曲である。
現在、伊藤さやかが歌っているものが、誕生のエピソードとともにYouTubeで公開されている。
その後、2007年末に現代朗読協会がおこなったステージウィーク「書けなかった手紙」のなかで「祈る人」という朗読と音楽のプログラムを上演することになった。そのとき、永倉秀恵に「ここへとつづく道」を歌ってもらい、その曲とリンクする形で「祈る人」というテキストを書いた。
それがこの「祈る人」プロジェクトの元になっている。
2010年、21世紀の最初のデケードが終わりあたらしい年が始まった。が、相変わらず世界は災害、紛争、貧困、怒り、憎しみ、そして悲しみに満ちている。
人々のあいだにも無力感が広がっている。
ハイチの大地震に関して、ある若者の言葉を聞いた。
「なにか自分にできることはないかと思ったんだけど、しょせん自分らはなんのスキルもないし、現地に駆けつけても邪魔になるばかりでなにもできないのはわかっている。結局、お金を寄付するようなことしかできない」
だれかの役に立ちたい、つながりを持ってともに助け合いたい、と思っている人は多い。なのに、いざなにか行動しようとしても、立ちすくんでしまう。
まず「祈る」ことから始めてみないか、と提案したい。
祈るとは、だれかに、なにかに思いをはせること。そこから始めて、自分にできることがあれば、たとえささいなことであっても行動していく。それが役に立つかどうかなんてかんがえない。
「祈る人」プロジェクトは、既成の宗教、思想、イデオロギー、団体、勢力、経済活動と一切関係はない。
私たちひとりひとりが、互いのことを思いやり、ささやかなつながりを持っていくことを願うためのプロジェクトである。