2018年10月25日木曜日

映画:教誨師

うちから一番近い映画館である立川の CINEMA CITY で観てきた。
監督(脚本も)は佐向大。
1971年生まれとまだ若いが、監督歴はずいぶん長いようで、作品もたくさんあるが、ほとんどがマイナーな作品で、私も名前を知らなかった。

しかし、この監督は注目株だと思う。

ふだん日本映画を観ることは少ない私だが、NVC関係の知り合いにクリスチャンが多いこともあって、この映画のことを知った。
「教誨師」とは、刑務所で希望する囚人にボランティアで話を聞いたり、宗教の話を説いたりするボランティアの牧師のことだ。

牧師とはプロテスタントの用語なので、神父とか、ほかにも仏教や他宗教の宗教家がいるのかもしれないが、この映画では牧師役を今年の2月に亡くなったばかりの大杉漣が演じている。
そう、この映画は大杉漣の遺作でもある。

全編をとおして、音楽はまったくない。
そしてほとんどのシーンが室内での教誨師と死刑囚との対話だ。
個性的な死刑囚が何人も出てくる。
それぞれが勝手なことをしゃべったり、沈黙を守ったり、苦しんだり、泣いたりわめいたり、さまざまな表情を見せる。
役者の見せ所ともいえる。

フィクションなのでぼかしてはあるけれど、実際に起こった事件とその容疑者を想定していることがうかがえる。
それぞれの役者がそれぞれの容疑者——その後死刑囚——を演じている。

私は知らなかったのだが、玉置玲央という若い役者が印象的だった。
障害者介護施設での連続殺人事件を想定する語りがつづく。
そこで彼がいう人の命、この現代社会の矛盾、そして死刑制度というものに対する問題提起は、なかなか衝撃的である。
いい役者だと思った。
東京の劇団「柿喰う客」のメンバーらしい。

ほかにも五頭岳夫、古舘寛治、光石研といった印象的な役者が出演しているが、なかでもびっくりしたのが烏丸せつこだった。
汚れ役を見事に演じていて、私はしばらく彼女だと認識できなかった。
そんなことも含めて、一見の価値はある映画だなと思った。