2020年7月16日木曜日

essay 20200716 退院決まる

明日、退院することになった。

病院では大変多くの人たちのお世話になった。
治療のためのお医者さんはもちろんのこと、看護婦さん達にはつきっきりでお世話になった。
入院中に必要な様々な物をMariには毎日持ってきたり持って帰ったりしてもらったりしたが、そういう「モノ」だけではなく、心の支えもはるばる行ったり来たり、労を厭わず運んでくれたことには感謝でいっぱいだ。

病院のベッドの上で音楽や文章の制作を続けられたのも、彼女がいたからこそだろう。
ベッドの上の届く位置に機材を並べて、ラップトップコンピューターでちょちょいと編集するのは、ひょっとして、端から見るととても楽な光景かもしれない。
実際には全然そんな事は無い。

おもちゃに毛が生えたようなプラスチックの鍵盤は大変扱いにくいし、膨大な量の音源やエフェクトを詰め込んだコンピューターソフトもやすやすと使いこなせるというものでもない。

そんな環境も今日で一旦終わりだ。
病院でもせっせと自分の仕事ができた。
私の表現活動の普及のためのサイトも立ち上がった。
退院するにあたって、いま私は、大きな幸せを感じている。
皆さん、本当にありがとう。




From editor


小さなキーボードでこんな曲が作れるんだ、と驚かせてくれるが、やっぱり大変だったのか……(笑)。
パソコンもストレスを感じるスペックらしい。
新しいMacbook Proが欲しいな、と言うので、みんなからの支援金で買う?と言うと、そんなことしていいのかなと言う。
あなたが表現活動を続けられるための支援って書いてあるじゃん!と励ます。
新しいMacがあったら……そう思ったら、すごくウキウキしてきたそうだ。
最高のクスリではないか。

Macbook Pro、ほんとに買ってあげたいな……
その前に入院費の精算だ。
帰宅してからが、きっとまた大変なのだ。
常時つづくモルヒネの皮下注射、訪問診療や訪問看護の回数も増える、薬代も、介助用品も。いろいろ管がつながっているし、体力が激減したので、車椅子での散歩も風呂も一苦労だろう。
でも、最大の願いである「クリアでいられる時間を増やして創作をしたい」という願いに応えてもらったこの入院の成果を生かしていく! 必ず。

  * * *

昨日のつづき。

水城の最大の才能は、観察力だろう。本人にもその自負はあった。
目の前の人がいまなにをしているのかを観察し、その人の身体の最小限の動きの提案で、その人の能力を、見ている他者はもちろん本人にもわかるレベルで引き出す。
しかし、水城の能力に依存した方法はその人を水城に依存させてしまう危険がある。

そこで、誰でもやれる方法での訓練を積み重ねていくことで、唯一無二のその人だけの表現を引き出していく、さまざまな「エチュード」を考案した。
水城がアイディアを出し、私がやってみて、それを水城が見て新たなアイディアを加え、私が整えていく、の繰り返し。
現代朗読や音読療法は、そうして生まれたいくつかのエチュードを「みんなで」やることが訓練の中心になっている。
さらには、みんなが自分でエチュードを考えだしていく。

現代朗読はNVCの精華といえるのではないか。
NVCを学んでもなかなか在れない「ありのまま」を、テキストと生身の身体さえあればできる方法で彫り出していくのが現代朗読だ。
自分軸で生きていく、そしておたがいが助け合って生きていく、そんな社会をつくろうという、社会変革のアートなのだ。

ああ、はるばる来たものだと、いま、改めて思う。


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