2020年7月1日水曜日

essay 20200701 あとなんにち

あと何日ピアノが弾けるだろう?

ベッドの中で体を何箇か所か動かしてみる。
以前のように力強くというわけにはいかないけれど、体はまだ動く。
先ほど飲んだ薬のせいで腹部の痛みは少しおさまっている。

両肘を吐きながら慎重に体を起こしていく。
途端に腹部の痛みは強くなり、呼吸が苦しくなる。
どういうわけだか腹部の痛みと酸欠のような息苦しさは連動しているようだ。

ピアノを演奏するための録音の設定をすでに済ませているラップトップパソコンを片手に持って、階下へと降りていく。
強まる腹部の痛みをこらえ、しっかりと手すりをつかみ、ピアノのところまで歩く。
息苦しさを少しでも緩和するために、酸素吸入器をセットしパソコンをピアノにつなぐ。
痛みと息苦しさはかなり強まっているが、しばらく椅子にへたりこんで息を整える。
しばらく鍵盤をにらみつけてから、おもむろに録音ボタンを押し、なにもかんがえずに演奏を始める。

どっちみち即興演奏なので、鍵盤を見る必要はないが、パソコンやデジタルピアノの操作系のボタンは見る必要がある。
しかし、最近は文字を読むだけの視力がほとんどないので、苦労する。

終わって呼吸を整えながら、今日もピアノが弾けた、と思う。



From editor


7月になった。7月にたどりついた。
本当に苦しい一歩一歩がつづく。
月曜は嘔吐し、点滴でなんとか吐き気を抑えた。
火曜は休むことしかできなかった。
水曜はなんとか風呂に入ることができた。
明日は……せめて食べることができれば、明後日につながるはずだ。
毎日、ひとつずつ。
1ミリ、うごかす。