けっこうトイレでちびちびと本を読むのだが、最近はこれ。
著者の下田昌克は、旅のスケッチ画家とでもいえばいいのだろうか。絵本も描いているけれど、旅のスケッチがいい。それも、お行儀のいいきれいなスケッチではなく、人に会い、正面から即興的に色鉛筆を運動させて描いたもの。建物や風景も息づいている。
2年間にわたる中国、チベット、ネパール、インド、そしてヨーロッパの旅における膨大なスケッチを本にしたものだ。
毎日、トイレで少しずつペラペラとめくっては楽しんでいる。
私も「サウンドスケッチ」というテキストを描きつづけているが、いつも「ネタ」を探している。ときには旅に出て、新鮮なネタを拾いたくなる。
この本を見ていると、とくに空間的な旅に出なくても、私たちは日々、時間的旅行をしているのであって、その気になりさえすればいくらでも新鮮なネタを発見し、描きとめることはできるのだと思う。
『PRIVATE WORLD』下田昌克/山と渓谷社