塔というのは、ようするに鐘楼だ。
鐘が鳴らされる正午に合わせて、のぼってみる。
大聖堂のまわりは土曜日からだろうか、たくさんの屋台が出て、観光客や地元民でにぎわっている。
食べ物や土産もの、農産物、工芸品などを売っている。
鐘楼の入口は正門脇の目立たないところにあった。
はいってみて、いきなりちょっと躊躇した。
螺旋型の暗い石段が、上の暗闇へとつづいている。
なんの案内もない。
ただのぼっていくだけのようだ。
まるで地下牢へとつづく石段のようだ。
いまは地下ではなく、天へとのぼっていくわけだが。
ひとひとりすれ違うのがやっとだ。
ときおり上からおりてくる人とすれ違うのだが、かなりぎりぎり。
休憩所はない。
ただえんえんとのぼっていく。
すぐに足に来た。
息切れする。
これは身体の弱い人は大変だな。
体重のある人もつらいだろう。
そして、あのどのくらいなのかわからない。
たまに小さなのぞき窓があって、外を見られる。
どのくらいの高さまでのぼったかがようやくわかる。
やっとたどりついた。
てっぺんの部屋で入場料を払って(4ユーロ)、そこからさらに最上部へとあがる。
最上部は鐘と、そのメカニズムをメンテナンスするための作業部屋になっているようだ。
親子連れなど何人かが正午の鐘を待っている。
決して広い場所ではない。
すぐ目の前に巨大な鐘がある。
鳴りはじめた。
一番でかい鐘が12回まず鳴った。
つづいて脇のやや小さめの鐘がぐわんぐわんと連続して鳴りはじめた。
頭が割れそうなほどでかい音だ。
いつまでも鳴りやまない。
たぶん10分くらいは鳴りつづけたんじゃないだろうか。
ようやく止まった。
ほっとするが、頭が痛くなって、耳鳴りがしている。
へろへろになりながら、来た階段をえっちらおっちらと降りて、地上にもどった。
降りるときはそれほど大変ではなかった。
それにしても、機会じかけがなかった昔の人はどのようにこれを動かしていたんだろう。