ドイツに入国するなり、いきなりやらかしました。
海外旅行はひさしぶりで、パスポートも取りなおしたくらいだから、不慣れといえばそうなのだが、あまりに機が抜けていて先が思いやられる。
以後、緊張感をもって旅程を進めたい、という自戒をこめて。
フランクフルトに到着して、無事にドイツに入国した私は、フランクフルト駅から鉄道でシュトゥットガルトに移動することになっていた。
シュトゥットガルトの宿を予約してあって、2泊する予定になっていた。
空港と駅は地続きなのだが、どちらもがらんと広くかなり歩かされる。
シュトゥットガルト行きの電車は、日本でいえば新幹線のようなもので、ホームがローカル線とは別になっている。
時間的に余裕をもってそちらに移動して、ホームの位置など確認していたら、ふと気がついた。
背中にしょっていたリュックサックがない!
ちょっと青ざめたかもしれない。
どこかに置き忘れてきたのだ。
私は荷物をふたつに分けていて、ひとつは衣類や日用品などこまごましたものがはいっている大きなカートで、それは飛行機に乗るときには預け荷物となる。
もうひとつは普段も使っているリュックサックだ。
こちらにはパソコンやアダプタ、その他なくなると困るものをまとめてある。
こちらを置き忘れてしまったのだ。
幸い、スマホやパスポート、カード類はジーンズのベルト通しに引っかける方式のポーチにまとめてあった。
しかし、パソコンやタブレットや充電のためのアダプタがなくなるととても困る。
置き忘れたのはどこだろうかとかんがえて、空港で最後にコーヒーを時間を調整していたカフェ脇のスペースに違いないと思った。
そこから鉄道駅に移動してきたのだから。
乗りこむ鉄道の時間が迫っていたのと、だれかに持っていかれたら困るというのとで、走ってカフェのところまで戻った。
ところが、見当たらないのだ。
近くのインフォメーションカウンターにたずねても、そんなものは届いていないという。
そして親切に遺失物を取り扱う事務所の場所を教えてくれた。
そこに行ってみるしかないのか、しかし届けられていないだろうなあ、最悪だれかが持っていってしまったに違いない。
それにしても、ここに置き忘れた記憶がない。
というか、思い出した。
ここでたしか、空港内が暑いので、着ていたダウンジャケットを腰に巻きつけたんだった。
その上からリュックをしょったものだから、ジャケットとリュックが腰のところでごわごわぶつかってじゃまっけな感じがした。
その感触をはっきりと思い出した。
ということは、ここに忘れたのではない。
記憶がよみがえってくる。
鉄道駅のほうに移動したとき、最初、特急ホームとまちがえてローカル線のホームに行ったのだ。
ホームが寒いので、腰に巻いていたダウンジャケットを着たおぼえがある。
そのとき、リュックをベンチの上におろした。
急いでローカル線のホームに行ってみた。
ベンチの上にリュックサックが置いてあって、駅員がまさにそれをどこかに持っていこうとしているところだった。
ぎりぎりのタイミングで回収できた。
が、走ってもどったが、予定の電車は出てしまったあとだった。
連れのSくんには先に行ってもらった。
私は次の電車に乗り、乗換駅でSくんと合流するつもりだったが、もうひとつミスを重ねてしまった。
チケットの時刻表を見て、空港駅のすぐ次の駅が乗換駅だとばかり勘違いしてしまったのだ。
降りた駅は大きな駅だったが、見ればフランクフルトのメイン駅だった。
あらためてシュトゥットガルト行きの電車をつかまえなければならない。
案内に聞いてみたら、チケットを買い直す必要があるから、そこの自動券売機で買え、という。
やむなくいわれたとおりに自動券売機で買おうとしたが、ドイツ語でよくわからない。
何度かやって、英語モードに切りかえられることがわかった。
それで予約を進めてみたが、最後のカードの読み取りのところがどうしてうまく認知してくれない。
だんだん面倒になってきた。
時間もどんどんすぎていく。
待たせているSくんのことも気になる。
え、もういいや、とそのままシュトゥットガルト行きの列車に飛び乗ってしまった。
ドイツの駅には改札はない。
その代わり、車掌がまわってきてチケットをチェックする。
そのときに追加料金を払えばいいやと思っていた。
やがてアラブというかロマっぽい感じの女性車掌がやってきたので、「I missed this train」と電子チケットを見せたら、「オーケー、いいよ」とスルーして行ってしまった。
チケットの買い直しも追加料金もなし。
フランクフルト駅の案内とはずいぶん対応が違う。
無事にシュトゥットガルトに到着し、ホテルにチェックインした。
こじんまりした、かわいらしいホテルだ。
Sくんとも合流できた。
街並みもきれいだ。
これからちょっと散歩に出てみようかな、やっと落ちついたことだし。