2016年公開の映画。
製作国はアイルランド、米国、英国とクレジットされている。
監督はジョン・カーニー。
だれが作ったとか、どういう内容の映画なのかとか、まったく知らないまま、なにも意識せずに見はじめた。
ある若者が謎の美女を気を引くためにバンドを結成するという、音楽映画なのだなとだけわかっていた。
見はじめると、そのとおりのきっかけの映画であり、血気盛んなアイルランドの高校生が、血気盛んなままつたない音楽をはじめ、でこぼこメンバーでバンドをはじめて、ミュージックビデオを作りはじめる、という内容だ。
とくにびっくりするような内容でもストーリーでも映像でもない気がしたが、なんとなく引きこまれていった。
そしてこれが大当たりだったのだ。
映画の舞台設定は1985年のダブリン。
そういえばそのころは日本でもMTVがはやったが、主人公もそんなビデオを作りたいと思う。
主人公の兄がまたいい感じのキャラクターで、引きこもりの負け犬みたいな扱いを受けているのだが、実はなかなかに芯のある男だ。
主人公にとっては兄が音楽もふくめてあらゆることの師匠役となっている。
複雑な役柄を演じたジャック・レイナーという役者は、この兄役でアイルランド映画&テレビ賞の最優秀助演男優賞を受けている。
最初はつたないバンドなのだが、主人公の少年が日常で遭遇するさまざまな事件やエピソードのなかで成長していき、それとともにバンドも音楽も成長していく。
そこのところがこの映画のメッセージだ。
気がついたら、曲作りに没頭する少年に、そして音楽作りや映像作りに熱中する少年たちの姿に心を打たれていた。
曲がまたいいんだ。
80年代のロックというか、ビジュアル系といってもいいサウンドだけど、独特のスピリッツがある。
監督は心底、音楽を愛し、理解している人だとわかる。
ヒロインも美しいしね。
最初はフェイクのモデルとかいいはってけばい化粧で登場するんだけど、素顔の彼女の美しさにははっとさせられる。
あとになってわかったことだが、私はこの監督の作品をすでに見ているのだった。
「はじまりのうた」という映画で、こっちもけっこう感動してレビューをすでに書いていた。
こちらはキーラ・ナイトレイという有名女優を主人公に据えた映画で、こちらもよかったのだが、そのあとに作られたというこの「シング・ストリート」は、ほとんど無名の俳優たちをキャストしたところがチャレンジングだと思う。
いいなあ、ジョン・カーニー。
気にいったぜ。