じつは私も過去に一度だけ、ぎっくり腰をやったことがある。
あの独特の痛みと、しばらくつづく不快な感じは、よくおぼえているし、また二度とあれにはなりたくないと思う。
私がぎっくり腰になったのは、忘れもしないちょうど30歳になったばかりのことだった。
私はその前年の29歳のときに徳間書店から長編小説を出版して、小説家デビューしたばかりだった。
最初に出た小説を読んだ他社のノベルス担当者からつぎつぎと小説の注文がやってきて、いよいよ専業で小説を書こうと決めた時期だった。
専業小説家ともなれば、当然ながら、一日中デスクワークということになる。
当時は原稿用紙に手書きで書くのと、ワードプロセッサに移行するのとちょうど中間の時期だったが、いずれにしても机にむかって座りっぱなしであることにはちがいない。
運動不足は避けられない。
そこで私は、新聞広告の通信販売かなにかで見つけた、自宅にもおける多機能のトレーニングマシンを購入することにしたのだ。
ある日、宅配業者が段ボールで梱包されたそのトレーニングマシンを届けにきた。
玄関の上がり框に置かれたそれを、私は室内のスペースに運ぼうとした。
段ボールをかかえ、それを持ちあげようとした、そのときだ。
ぐきっ。
いやな感じの音がして、私はそれっきり動けなくなってしまった。
これが生まれて初めての(そしていまのところ最後の)ぎっくり腰だった。
結局、届いたトレーニングマシンの梱包は一度も開かれなかった。
ほしいという友人がいたので、そのままゆずってしまった。
そのかわり、私は痛みが引くと、近所のプールにかよいはじめた。
たぶん水泳が私の身体に合ったのだろう、腰の筋肉を無理なく強化するのにきいて、以来一度もぎっくり腰を経験することなく現在60歳にいたっている。
いまは水泳はほとんどしないが、かわりに軽い筋トレ、站椿という中国武術の稽古、そして呼吸法がぎっくり腰予防にきいていると感じる。
とくに呼吸法はだれにでも無理なく、毎日つづけられる「運動」なので、おすすめだ。
私がやっている呼吸法に興味がある方は、音読カフェかボイスセラピー講座に参加することをおすすめする。
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