まったく想像もしていなかったことだが、オリジナルの朗読プログラム「Kenji」が思いもかけなかった広がりを見せている。
(1)
最初のきっかけは、世田谷文学館からの依頼だった。
世田谷区内の中学校向けに、宮澤賢治の朗読プログラムを上演してくれないか、という話が最初に来た。
世田谷文学館では、賢治の作品を下敷きにした写真と文章で構成されたパネル展示で〈巡回文学館〉という企画を小中学校向けに展開していた。賢治以外にも「赤毛のアン」とか「シャーロック・ホームズ」というのもあるのだが、とりあえず賢治。
依頼に応じて、オリジナルのプログラムを作った。賢治のいろいろな作品をコラージュして、音楽や歌を入れて構成したプログラムだった。
おそるおそる上演したのだが、とても好評をいただくことができた。
(2)
世田谷文学館との共同企画と並行して、名古屋で公演をやる企画が持ちあがった。そのなかで、中学校向け「Kenji」を、一般向けの大きな公演プログラムとして書きなおしてはどうか、という提案をし、それが受け入れられた。
さっそく準備が始まり、一般参加者のワークショップなどもおこなわれ、2009年9月に愛知県芸術創造センターホールで、中学校向け「Kenji」の発展形「Kenji - 宮澤賢治・音と光と土 - 」が上演され、大きな反響を得た。
(3)
世田谷文学館から、「Kenji」を小学校でやれないか、という打診が来る。
そのままでは難しいかもという判断で、小学生向けに中学校バージョンの「Kenji」をリライトし、駒沢小学校の全校生徒相手に上演する。これも好評をいただくことができた。
(4)
世田谷の児童養護施設〈福音寮〉の子どもたちをボランティアで支える人たちから、朗読ボランティアの話が持ちこまれる。対象となる年齢層は幼児から高校生までと幅広く、小学校向け「Kenji」をさらにリライトした脚本でやることになった。
3月30日と4月5日に、東松原の〈Spirit Brothors〉という店で、子どもたち相手に上演することになっている。
(5)
その他、定例ライブの中野ピグノーズで「Kenji」の一部を実演したり、4月3日と4日に代々木公園で開催される平和イベント〈SPRING LOVE ~春風~〉での出展ブースでも「Kenji」の朗読パフォーマンスを行なう予定。
(6)
名古屋「Kenji」は、今年はあたらしいプログラム「Ginga - 宮澤賢治・時と地と星 - 」として、ワークショップと、本公演を名古屋芸術文化センターにて上演する予定。
自分の意志ではなく、自然に求められてこのように展開していった「Kenji」プログラムというもの。とてもおもしろいと思う。