タイトルがおもしろくないが、原題は「Going Local is the Answer」。
ヘレナ・ノーバーグ=ホッジという人に辻信一がインタビューしたものを本にしたもの。はっきりいって安直な作りだが、内容はおもしろい。
ヘレナ・ノーバーグ=ホッジは『ラダック 懐かしい未来』という本で有名になった人だ。ラダックという、かつての日本やブータンのように鎖国をしていた国が、世界に開かれ、グローバル経済の影響を受けて劇的に変化していく様子をつぶさにレポートした本だが、これはドキュメンタリー映像にもなっている。私もその一部を見たが、衝撃的であると同時に、まさに私たちがリアルタイムに日本の高度経済成長時代のなかで経験してきたことそのものが集約して映像化されていると感じた。
そしてそれは、ラダックでも日本でも、いまも進行中である。
重いテーマだが、インタビュー本なので、口調は軽く、読みやすい。入門にはうってつけ。
ところで、ヘレナの本を読むと、100円ショップやマクドナルドには決して行きたくなくなる。インスタント食品や冷凍食品も買わないようになる。
理由はヘレナの本を読めばわかるし、ネットにも彼女のことがたくさん書かれている。来日してもいる。
まさに彼女の本のタイトルである『RetroFuturism』という言葉を、私は深く考えてみたい。
「進歩」ばかりが良い選択とは限らない。
ときには「最善な時」へと戻ってみる選択も、勇気ある決断となるかもしれない。
これを朗読表現にあてはめてみたとき、私は朗読技術論を根底から見直し、人と人のコミュニケーションの出発点まで立ちもどって検証してみることが必要だと感じる。
『いよいよローカルの時代』ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ/辻信一/大月書店(ゆっくりノートブック)