2015年12月15日火曜日

声帯を傷めない発声法

げろきょゼミ生のひとりが声帯を傷めてつらい思いをしていた。
幸い、もうすでにほぼ回復しているのだが、一度ひどく傷めると回復するのにとても時間がかかる。
日常生活や仕事にも差しつかえる。
できれば最初から傷めないほうがいいし、すこしでも異常を感じたらそれ以上悪化しないように気をつけて、初期のうちに治療するほうがいい。

以下、やや私見がはいっているのだが、日本人は喉を傷めやすい発声をしている人が多い。
西洋人で喉をからしている人を見たことがあるだろうか。
私はない。
歌手なのに、煙草は吸うわ、お酒は飲むわ、しかもライブの最中に、そして喉をいたわるようなことをなんにもしていないのに、平気な顔をしている人を知っている。

(多くの)日本人と(多くの)西洋人では、なにがちがうのだろうか。
ひとつには身体の構造がちがう。
日本人は声帯まわりの構造が虚弱な人が多いように思う。
体格の差がそのまま声帯まわりの構造にもあらわれているのかもしれない。

もうひとつは、声を出すときの身体の使い方がちがう。
バイリンガルの人が話すのを見ていると、英語を話すときは身体全体を使って、呼吸も深い。
おなじその人が日本語を話すときは、口先だけでしゃべっていて、いわゆる喉声になる。

西洋人が大きい声を出すときは、喉を開き、身体全体を響かせるようにする(オペラ歌手参照)。
日本人(東洋人)が大きい声を出すときは、喉を締め、声帯を通る呼吸の速度をかせぐことでボリュームを確保しようとする(市場のセリの人の声参照)。
この喉の使い方の傾向があることによって、日本人は喉を傷めやすいのではないか、という推測をしている。

なので、喉を傷めたくないとき、あるいは喉を傷めかけているときは、なるべく喉に負担がかからないような発声をこころがけたい。

声帯まわりに余裕をたもち、圧迫させないために、心がけるといいことがひとつある。
それは、軟口蓋を上に引きあげる意識を持つということだ。

軟口蓋というのは、口のなかの上の部分、喉の手前のやわらかい場所のことだ。
ここを意識的に引きあげるのはなかなかむずかしいのだが、自然に引きあげられるときがある。
それは「あくび」をするときだ。
意識的にあくびをしてみると、軟口蓋が上に持ち上がっている感じをつかむことができる。

そのまま声を出すと、ちょっとオペラ歌手みたいな不自然な発声になってしまうが、そこまでやらなくてもちょっと軟口蓋を意識してみるだけで、声帯まわりの圧迫はかなりなくなるはずだ。

喉を傷めかけていて、どうしても人と話す必要があるときには、これを意識してみると、だいぶ役に立つだろう。
というようなちょっとした悩み相談みたいなことも、げろきょゼミではおこなったり、検証したりしている。



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