2014年11月21日金曜日

私のピアノ歴

なぜか最近、あちこちで訊かれるので、書いておこうと思う。

私はピアニストであり、さまざまな場所でライブやコンサートをおこなったり、歌手のライブのサポート演奏をしたり、朗読パフォーマンスと共演したり、バンド演奏に参加したり、また自分でも曲を作ったり、CDをリリースしたり、という音楽活動をおこなっているが、音楽大学や専門学校を出ているわけではない。
音楽にかんする専門教育を受けたことは一度もないし、ピアノ演奏も作曲・アレンジ・即興演奏も、教師についてならったことはない。

一度だけ、小学校三年から六年の四年間、いわゆる街のピアノ個人レッスンにかよったことがあって、そのときはごくふつうにバイエルとかブルグミュラーとかソナチネといった曲を習って練習していた。
私が人についてピアノを習ったのはそのときだけである。
以後、即興演奏をふくむピアノ演奏についても、作曲やアレンジについても、すべて独学で身につけてきた。

私が毎日楽しく、それがひと前であろうがひとりであろうがピアノを弾けているのは、中学生以降一度も強制されて音楽に向かったことがないという、幸福な体験に裏付けられていることが大きいように思う。

個人レッスンでピアノを習っていた小学生の最後のころ、私はピアノを練習したりレッスンに通うのがいやでいやでしかたがなくなり、両親に「頼むからピアノをやめさせてくれ」と泣きついた。
両親はそれを受け入れてくれたわけだが、それが音楽との幸福な付き合いのスタートになったのだと、いまでは思える。

ピアノレッスンに通うことを免除された私は、それでも音楽は好きで、中学校にはいるとブラスバンド部にはいった。
楽器はトランペットだった。
が、これはすでにどこかに書いたと思うが、集団表現が肌にあわず、一年もたたないうちにブラスバンド部はやめてしまった。

私はもっぱら、家で気ままにピアノを弾いて楽しんでいた。
なにしろだれからも強制されないのだ、自分の好きな曲を好きなように弾く自由を満喫していた。
クラシック音楽しか知らなかったのだが、そのうち世間が広くなってくると大衆音楽も聴きはじめた。
とりわけフォークソングからロック、高校生になるころにはジャズに魅惑されていった。
自分でもまねごとでジャズを弾いてみたりしたが、どうしてもうまく弾けなかった。

大学に進学し、親元をはなれて京都に住んだとき、あこがれのジャズ喫茶やライブハウスを初めて経験した。
ジャズバーでアルバイトをはじめ、本物のジャズミュージシャンたちと交流を持った。
私も多少ピアノが弾けるということで、バンドマンの仕事がまわってきた。
やがて本格的にバンドマンとして生活するようになった。
それはまだカラオケマシンが普及する前のことで、しかしすぐにカラオケが夜の街に普及しはじめ、駆け出しのバンドマンはすぐに仕事がなくなってしまった。

大学も中退した私は、生まれ故郷にもどり、ピアノの先生を細々とはじめた。
子どもにも教えたが、大人相手のジャズやポピュラーピアノも教えた。
また、地元のミュージシャンや美術アーティストたちと、当時はやっていた「パフォーマンス」をやったりした。

そのことが目にとまり、開局したばかりのFMラジオ局で番組制作を手伝わないかと誘われた。
それがナレーターや朗読者との関わりの最初だった。
名古屋から番組タレントとして来ていた俳優の榊原忠美と知り合い、番組外でも朗読と音楽の即興ライブをやるようになった。
それがいまの私がやっていることの始まりといえる。

その後も朗読との即興パフォーマンスはずっとつづけていたし、仕事場を東京に移してからは歌手との活動、ラジオ番組やオーディオブック、映画製作者とのかかわりのなかでオリジナルの楽曲をたくさん作った。
そうやって私は独自の路線で、いまの音楽活動にいたる道をたどってきたのだ。

いま私は、NPO法人現代朗読協会の主宰として、日本でもっとも深く朗読とかかわりをもっている演奏家のひとりといっていいだろう。
毎月、数多くのライブや公演の機会があり、私も朗読者といっしょにステージにあがるが、朗読するわけではなく、ピアノの即興演奏であることがほとんどだ。
朗読者以外にもフリージャズの人たちとやることも多い。
先日は、普段はフリージャズをやっているサックスの近藤さんとベースの日野くんとの三人で、めずらしくスタンダードナンバーを演奏するライブをやったりもした。

ほかには歌手といっしょにやることもある。
先日は伊藤さやかとの音楽ユニットOeufs(うふ)で、町制30周年の記念コンサートのために埼玉県の滑川町まで行ってきた。
オリジナル曲を作って歌ってもらうこともある。
病院や老人ホームで演奏することもある。

教えることはあまりやっていないが、求められれば拒むものではない。
とくに「実用音楽」を教えることには意欲がある。
実用音楽とは変な言葉だが、つまり実用として役に立つ演奏家を育てるためのレッスンだ。
立派な音楽大学や専門学校を出ていても、楽譜がなければ弾けないとか、自分なりにアレンジできないとか、歌手の声域に合わせた転調ができないとか、即興演奏ができないとか、非実用的な演奏家が多いが、そういう人たちに実用的な演奏家になってもらうためのレッスンだ。
ま、興味がある人はお問い合わせください。

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