2019年9月9日月曜日

検査結果を告げられ延命治療を提案される(末期ガンをサーフする(6))

9月9日、月曜日。午前10時。
6回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。

昨夜から今朝にかけて台風15号が関東を直撃・通過して、私が住んでいる家や地域に被害はなかったが、都心部や湾岸部、神奈川、千葉のほうは電車が止まったり、道路が通行止めになったり、木や電柱が倒れたり、停電になったりと、かなりの被害が出たようだ。
その影響で、放射線科のスタッフにも定時に病院にたどり着けない人がいたらしく、予定の時間よりすこし遅れての治療開始となった。
30分くらいの遅れで、私はほとんど支障はなかったが。

照射治療はいつものとおり、約10分で終了。
明日の治療時間の予約をして帰る。

  *

6月前半にいろいろな検査を受けた結果を、6月20日木曜日に多摩総合医療センターの消化器外科の担当医から聞いた。
胃に近い食道下部に、食道を取りまくようにしてガン組織がある。
完全に巻いていないので、まだ食事は通る状態だが、ほうっておけば閉塞が進んで、数か月以内に食事が取れない状態になる。
そうなると栄養失調で死にいたる。

また、食道のガンのほかに、胃の横のリンパ節が2か所、肥大化が見られて、転移があると思われる。
ここまでだとステージⅡなのだが、さらに胃の下の奥のほう、大動脈の脇にあるリンパ節にも転移があって、遠隔転移——つまりガンが進んだ状態であることをあらわす——なので、ステージⅣと認められる。

治療方法。
ガン本体はすでに大きく、初期の食道ガンでおこなわれる内視鏡手術はできる状態ではない。
開腹手術の必要があるが、その前に食道やリンパ節のガン組織をある程度やっつけておくことが望ましい。
まずは抗がん剤治療をおこなって、ガン組織をたたいた上で、年内のできるだけ早い時期に手術をするのがいいだろう。

食道ガンの場合、かなりの大手術となることを覚悟しなければならない。
胸郭をひらいて、肺、心臓、胃を切りはなし、ガン部位を切除した上で、食道の上のほうまで胃を引っ張り上げてつなげる。
通常、8時間くらいかかる手術となる。

抗がん剤治療は1週間くらいの入院を必要とする点滴での投与を、1か月おきに全部で4回くらいおこなう。

これだけのことをやってなお、完治は保証できないし、再発の可能性も高い。
食道ガンはとくに根治の可能性が低く、進行状況から見て10パーセントくらいかと思われる。
それでも可能性がゼロではないので、以上の治療をおすすめする。

これが担当医から聞いたことだ。
聞いた当初、私もそれ以外の方法はないのだろうな、受け入れるしかないなと、半分くらいはいさぎよい気持ちで腹をくくった。
「抗がん剤治療はいつからになりますか?」
「7月にはいったらすぐにやりましょう。できれば7月1日から」

ということで、10日後の入院治療を私は覚悟しかけた。
しかし、そこでどうしても聞いてみたいことがあった。
「抗がん剤以外の治療方法はないんですか?」
「通常はありません。これが標準治療となっています」
「抗がん剤を拒否して放射線治療を選んだ人がいると聞いたことがあるんですが」
「イレギュラーですが、それを望まれるんですか?」

私はなにを望んでいるんだろう。
抗がん剤の治療は、聞くところによれば副作用がひどい人もいるらしい。
医者にそれをたずねてみると、最近は副作用も昔ほどひどくないし、副作用に対処する方法や薬もいろいろあるので、そう心配することはありません、という。
しかし私には引っかかりがあった。

私はなにを望んでいるのか。
抗がん剤と手術で治療し、生きのびることを望んでいるのか。
しかし、根治の可能性は低いといわれている。
ということは、数か月の延命のために、ひょっとしてつらいかもしれない抗がん剤と、予後はおそらく長期間にわたる回復期間の必要な大手術を受けるのか?
いまこの瞬間のとても(ガン以外は)健康で活力のある日常を手放して、延命治療のために使ってしまおうというのか?

私のためらいを担当医はちゃんと見ていて、聞いてくれた。
「どういうお気持ちですか? どういうふうにしたいですか? それとももうすこし考えてみられますか?」
すこし考えてみたい、と私はこたえた。
考える、その時間をあたえてくれるのは、ひょっとして治療にとっては貴重な時間の浪費になるのかもしれないが、私にとってはとてもありがたいことだった。

1週間考え、来週の木曜日にまた担当医と話をすることになって、その日の診察は終わった。