9月25日、水曜日。午前10時。
15回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。
今日で治療予定回数のちょうど半分が終わった。
はじまったすぐは体調の変化の波が大きく、どうなることかと心配になったが、いまは落ち着いてきていて、調子もいい。
このまま後半を最後まで乗り切れるといいのだが。
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7月10日の化学療養科のT医師の診察の最後に、治験を受けてはどうかという提案があり、12日にはその内容について医師と治験コーディネーターの女性による詳しい説明があった。
治験のメインは免疫療法による新薬の治療で、これは他のガンではすでに使われているし、食道ガンについても年内か年明けくらいには認可されることがほぼ決まっている。
有効性についてはさまざまなデータや意見があるが、治療内容を見ると最初の治療以外には入院の必要はなく、通院での治療が可能だ。
問題は、治験なので、公平なデータを取る目的があって、3つのコースのどれにあたるか、くじびきで決まるので、自分ではコースを選べないという点だった。
新薬のコース、新薬と従来薬のコース、従来の標準抗ガン剤のコース、この3つがあって、どれになるかわからない。
新薬の場合は、その有効性を過信することはできないが、治療内容は患者の負担が少ないように思える(副作用がどの程度なのかは個人差があるので未知)。
新薬と従来薬の組み合わせの場合、従来薬が月に1回・1週間程度の入院での点滴治療が必要で、それを4回おこなう。
標準抗ガン剤治療の場合は、月に1回・1週間程度の入院での点滴治療、これが4回。
そして従来薬の副作用については個人差が大きいとはいえ、吐き気や食欲不振、免疫不全による肺炎や感染症、末梢神経のしびれなどが出る可能性がわかっている。
治験で新薬を受けられるか、従来治療になるかは確率の問題で、まったく不透明だった。
治験にはメリットとデメリットがあり、それについてもコーディネーターから丁寧な説明があった。
メリットとしては、本来、保険がきかない高額な新薬治療が、基本的に無償になること。
入院費用も製薬側の負担となる。
交通費などは支給される。
すでに検査だけでもかなりの医療費を支払っていた身としては、ありがたい措置だった。
デメリットとしては、データを取る目的があるので、きちんとしたペースで正しく治療を受ける必要があること、検査が多くなることなどがあった。
またもし新薬治療を受けられることになったとしても、それによって必ずしも劇的な治療効果が望めるものではなく、人によって効果はかなりの差があることを説明された。
それは標準治療でもおなじことだった。
治験を受けるにせよ、受けないにせよ、最初の治療にはすくなくとも数日間、長ければ1週間程度の入院になる、どうしたいのかじっくり考えてください、ということで、1週間の猶予をもらった。
翌週は北陸の実家に帰省したり、NVCを用いた企業研修のサポートで大阪に行ったりして、丸1週間留守にする予定があったので、つぎの担当医の診察は翌々週の7月22日になった。
それまでにかなり考え抜き、また親しい者とも相談した結果、私は治験を受けてみてもいいという気持ちにかなり傾いていた。
治験を受けるためには、そのための基礎データとなるゲノム検査が必要で、採取したガン組織をアメリカに送り、その結果がもどってくるのが2週間近くかかるとのことだった。
すでに組織サンプルは採取ずみだったので、それを送ればすむらしい。
症状としては、痛みが常時胸のあたりにわだかまる感じになり、ときにはシクシクとかなり気になるほど強くなることもあった。
そのために痛み止めを処方してもらった。
市販薬でもあるロキソニンだが、これはよく効いて、日に2錠か3錠、欠かさず飲むようにしていれば、痛みが気になることもなかった。
ただ、食事のときの食べ物のつかえが、とくに食事始めの最初のひと口、ふた口がやっかいで、食道がかなり狭まってきている感じが自分でもわかるほどだった。
22日に担当医とコーディネーターに治験を受けてみたい旨を伝え、そのための手続きにはいった。
入院するための予備手続きもおこなった。
月末29日には、現在の食道ガンの最新の状態を見るために、最後のCT検査をおこなった。
造影剤を投入しての検査だった。
予定どおりなら翌8月の1日・木曜日には連絡があり、早ければ2日・金曜日には入院、というところまで決まった。