16回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。
いよいよ今日から治療の後半スケジュールにはいった。
治療パターンは月曜日からスタートして、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日と平日は毎日、そして土日は休みとなっている。
祝日や振替休日も休み。
よほどのことがあれば自分のつごうで休みをもらうこともできる。
月に1回、機器の点検の休みがある。
月曜日からスタートして、通常は5回連続、治療がある。
3回め、つまり水曜日あたりから、なんとなくむかむかした感じがして食欲が落ちたり、倦怠感が出たりする。
放射線で焼けた食道の粘膜がひりひりして、食事のときに気になったりする。
それらは土日で回復する。
波があるけれど、体調はおおむねほぼ健康体と変わりないといっていい。
やりたいことはちゃんと集中してやれている。
このテキストも、毎日ちゃんと書けている。
これは本当にありがたいことで、延命のための治療でなにもできないくらい活力が落ちてしまう人がいるのを知っているので、いまの私が治療をつづけながらも活力をもって毎日活動できていることに満足している。
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7月末に治験を受けることを決意して、その申請をおこなった。
アメリカに行っている検体の検査結果がとどいて、どのコースでの治験になるのかわかるのは、入院前日か、ひょっとして当日になるかもしれないということだった。
検査結果がいつ届いて、いつ入院が決まるのかはわからなかった。
1週間近く、連絡を待った。
早ければ8月1日に連絡があって、2日から入院、というつもりだったが、その週には連絡がなく、翌月曜日の8月5日になってようやく連絡があった。
火曜日・6日から入院、ということで、火曜日の朝、通勤ラッシュの名残があるなかを電車でりんかい線の国際展示場駅まで行く。
国立からは乗り換えは楽なのだが、けっこう遠い。
中央線で新宿まで行き、そこから埼京線に。
うまくいけば埼京線に乗り入れているりんかい線直通でそのまま国際展示場まで行けるが、乗り入れに接続しなければ大崎でりんかい線に乗り換えが必要。
1時間半くらいかかる。
1度車で行ったこともあるが、こちらはさらに時間がかかった。
東京都心のどまんなかを突っ切って行く感じで、ルートはおもしろいのだが、やたら効率が悪い。
入院手続きをして、病室に案内される。
担当の看護師がいろいろ説明してくれたが、みなさん忙しそうだ。
レンタルの病院着を借りていたので着替えてみたが、まだ寝ている必要もなく、とくに着替える必要もなかったので、普段着にもどってしまった。
体重とか身長、血圧などのありきたりの検査を終えると、もうやることがなくなってしまった。
持ってきた編物で時間をつぶす。
こういうとき、手仕事があるというのは助かるし、落ち着く。
そのうち、治験コーディネーターの女性がやってきた。
なにか申し訳なさそうにしている。
聞けば、アメリカに出した検体が、治験の条件に合わず、治験を受けられなくなったというのだ。
なんでも、ガン組織の密度が足りなくて、治験を受けられる条件を満たしていなかったらしい。
担当医もやってきて、どうするか相談になった。
今回の治験が受けられないことはもうやむをえないことなので、このまま標準治療に切りかえて抗ガン剤治療をスタートさせる。
あるいは、もう1度検体を提出して、治験申請をやりなおす。
ただ、後者だとさらに2週間くらい時間がかかってしまう。
そのあいだ、また待っていなければならない。
ガンはそのあいだも進行するだろう。
担当医とコーディネーターの提案は、標準治療に切りかえて、このまま明日から抗ガン剤の点滴をスタートさせる、というものだった。
最初に5日連続で点滴して、そのあと体調を見て大丈夫そうだったらいったん退院。
それを1か月ごとに繰り返す。
治験が受けられないとあればやむをえない。
多くの選択肢はなかった。
私も覚悟を決め、この日は病院に泊まることにして、翌日からの抗ガン剤治療を受けることにした。