14回めの放射線治療のために東京都立多摩総合医療センターに行く。
今回は金曜日からの名古屋行きで1日治療を休ませてもらい、さらに土・日・秋分の日と3日間の連休も加わって、4日の休養となった。
おかげで調子がいい。
というより、先週の火・水とかなり調子が悪くなって、名古屋行きが心配だったのだが、金曜日にはすっかり調子がもどり、ツアーは元気になにごともなく終了した。
金曜日の午前中にこだまのグリーン車でのんびりと名古屋に移動、午後は現代朗読のワークショップ。
夜は沈黙の朗読のコンサート。
そして手羽先の山ちゃんで打ち上げ。
翌土曜日は午前中から愛知トリエンナーレの観覧、夕方に新幹線で東京にもどり、その足で吉祥寺〈曼荼羅〉でのオープンマイクに参加。
ゼミ生ユウキと野々宮卯妙のふた組の朗読パフォーマンスで、即興ピアノの共演をおこなった。
これだけの密度の濃い時間は、健康体であってもなかなか大変だろう。
今回、ワークショップやコンサートに参加してくれたり、スタッフや撮影隊としてサポートしてくれた皆さん、朗読の共演者、オープンマイクを来てくれた人たち、みなさんと濃密で深いつながりの時間を持てたことは、私にとってなにものにも代えがたい宝物の時間だったと感じている。
抗ガン剤治療や摘出手術ではなく、放射線治療を選択していたからこそ、このような時間が持てたと思っていて、たとえそれでなんらかの影響があったとしても後悔はまったくないどころか、自分の選択をお祝いしている。
もっとも、このような選択は私のようなガンの状況、進行度合い、そして私のような仕事、生きることについての理念があってのことであって、一般的におすすめするものではない。
あくまでも私の個人的選択ということだ。
*
7月3日に内視鏡検査と組織サンプルのピックアップ。
7月8日に歯科検診。
抗ガン剤治療をおこなったときに感染症にかかりやすくなるので、歯周病や虫歯がないかあらかじめ調べておくのだそうだ。
幸い、私は歯は丈夫で、いつもほめられる。
今回もほめられた。
7月10日午前中、紹介してもらった消化器外科のトップのY医師の診察を受ける。
所見は基本的に多摩総合医療センターと同様だったが、さすがにガン専門病院だけあって、より詳細な説明があった。
説明内容は文書でもいただいた。
文書の概略。
—————
食道ガン リンパ節転移(腹部大動脈周囲) 第4期
離れたリンパ節に転移があり 根治手術ができない状態で見つかっています
治療は化学療法になります
がんを抑えてできるだけの長生きを目指すことが治療の目的です
治療ありで余命は平均1年(私の場合1年は厳しい←これは口頭で)
手術や放射線が有用と判断できる場合はそれを行うこともあります
がんによる部分的な症状(例 食物のつかえ感)が強い場合はその場所に放射線を用いることも今後考えられます
専門病院として最善を尽くした治療を考えます
治験治療やゲノム検査も適応があれば選択肢として提案します
非常によく効く方もいますがそうでない可能性もあるため、元気な時間は大切に過ごしてください
副作用もある延命的治療であるため抗がん剤治療をしないことを積極的に本人が希望する場合は尊重されます(現状それは推奨しません)
—————
午後は消化器化学療養科のT医師に引きつがれて、治療内容の詳細な説明を受ける。
午前も午後も、ふたりの医師ともに、説明のたびに私の気持ちを聞いてくれ、
「どんなお気持ちですか?」
「どう思われますか?」
「どうしたいですか?」
と寄りそってくれる印象があったのが大変ありがたかった。
私自身は不思議にショックは感じておらず、冷静に所見を受けとめていたが、担当医がこちらに共感しようという姿勢を持ってくれているのは、大きな安心だった。
ところで、午後の診察の最後のタイミングで、T医師から、
「治験を受けてみますか?」
という提案があり、詳しく聞いてみると、まだ認可が降りていない新薬の抗ガン剤を受けられる可能性があるとのこと。
とっさに決めかねて迷ってしまったが、思いきって訊いてみた。
「先生はどうするのがベストだと思われますか?」
すると、治験を受けることを「強くおすすめします」ということばが返ってきた。