ジョイメンバーならだれでも使えるお金のいらない店〈ジョイ〉は、やさしい社会の検証実験を実現しているアズワンの中核部分の「目に見える形」だが、おなじ中核部分ではあるけれど目に見えにくいシステムとして「オフィス」というものがある。
オフィスは実際にジョイの隣にあって、見たところ普通の事務所。
机がいくつかならんでいて、コンピューターに何人かがむかって仕事している。
見かけにだまされそうだが、ここがアズワンという特別なコミュニティを維持しているエンジンなのだ。
ここではジョイの運営はもとより、「大きな財布」の管理をおこなっている。
ジョイメンバーはここにお金の管理をすべて任せることで、そのわずらわしさや心配、ストレスから解放されているのだ。
たとえば、家賃、食費、光熱費、年金、保険、子育てや介護の費用、学費といったことについて、メンバーはなんの心配もない。
なぜなら、必要ならオフィスが管理している大きな財布から出してもらえるからだ。
お金のことだけではない。
オフィスは、だれでも気楽に相談できることになっている。
また、ジョイにやってきたメンバーにオフィスメンバーが声をかけて、コミュニケートすることもある。
結婚、進学、就職、起業、貯蓄、老後の心配など、なんでも気軽に相談できる。
オフィスメンバーはもちろん、サイエンズスクールを受講して「共感的な耳」を持っているので、だれかの心配にたいして決めつけたり、非難したりすることはなく、相談者は安心してなんでもいえる。
甘えたいだけ甘えられるともいえる。
たとえば、引っ越ししたいと思ったとき、オフィスの人にそれを相談する。
すると、不動産関係に強い人を紹介してくれたり、引っ越し費用の不安を聞いてもらったり、手伝いの人を集めてくれたり、といった心強い相談相手となってくれる。
オフィスには経理が得意で、経済をまわすことが好きな人がいるらしい。
収入と支出のバランスや、収益と経費のことをいつもかんがえてくれている。
おかげで、お金のことが不得意な人も安心してオフィスに自分のお金関係のことを任せておける。
私だったら、自分の支出と収入を全部だれかが管理してくれて、税金や年金のことを代行してくれたら、どんなに楽だろうかと思う。
家賃、水道光熱費、年金、保険、通信費、クレジットカードの決済といった支出や、講座や印税収入といった収入を、だれかが一手に引き受けてくれて、確定申告もやってくれたら、いまそれに費やしているエネルギーやストレスをもっとクリエイティブな部分に振り向けられるだろうということは、容易に想像できる。
アズワンに活気があり、成長しているのには、そういうシステムの裏打ちがあることにもよるのではないだろうか。
なにか心配や困ったことがあれば、とにかくオフィスに行けばなんとかなる、そんな安心感があることによって、人々はのびやかに生活し、仕事し、活動していける。
(つづく)