Apple社製のiPodという音楽プレーヤーが日本にはいってきたとき、もたらされたのは機器だけではなく、その仕組みだった。
それまでCDを買ってプレーヤーで聴いたり、ちょっと進んだ人だとパソコンでCDをリッピングしてデジタルデータとして携帯電話や携帯プレーヤーに転送して聴く、という方式だった。
しかし、iPodを買うと、パソコンとつないで iTunes music というアプリで手持ちの楽曲を管理したり、転送する方式になっていた。
そしてそのアプリはネットにつながっていて、そっくりそのまま Music Store になっているのだ。
音楽はCDを買う時代から、ネットから一曲ずつダウンロードする時代になった。
Music Store は楽曲だけでなく、オーディオブックとPodcastというコーナーもあった。
(いまはそれに加えてゲームや映画、ブックなどもある)
海外では識字率の低さや長距離ドライブの機会が多いこともあって、オーディオブックはかなり普及していた。
メジャーな作家の本は、新刊書と同時にオーディオブックも作られる。
そんなわけで、インターネットが普及したとき、ダウンロードコンテンツとしてのオーディオブックもかなり充実していて、Appleの Music Store にも相当数のコンテンツが並ぶんでいた。
ところが日本の事情はまったく異なっていた。
iPodを買ってiTunesを開いた人も、「オーディオブック? なにこれ?」という感じだったのではないか。
私もそうだった。
なにしろほとんどコンテンツがなかったのだから。