2019年2月8日金曜日

私の音楽歴——いかにして即興ピアニストになったか(35)

NVCを私に紹介してくれたのはアレクサンダーテクニークの講師として朗読講座に来ていた安納献だった。
アレンサンダーテクニークの教師の資格を取ったばかりの彼は、勉強のためにしばしば渡米していた。
その折にNVCを知り、いたく感銘を受けたらしく、私にも紹介してくれたのだった。

アレクサンダーテクニークの講座が終わってから、現代朗読協会の関係者を相手に、内輪のシェア会を何度か開いてくれた。
私もNVCの考え方を知ってかなりびっくりした。
びっくりすると同時に、うれしくなった。
いまの社会にこれが広まれば、さまざまなトラブルがなくなるだけでなく、人本来の思いやりをもって接しあえる、共感的な世界が実現するかもしれない。
戦争や紛争や暴力のない世界だ。

NVCはアメリカのマーシャル・ローゼンバーグが提唱したコミニュケーションの考え方だ。
私がこれを知った2007年当時、マーシャルの本はまだ翻訳されておらず、英語の本を読むしかなかった。
のちにマーシャル本を監訳することになる安納献が、私にとって最初のNVC指南者になったというのは、ラッキーなことだった。

その後、やや距離を置いた時期もあったが、NVCは私の生活や表現活動にとって欠かせないものとなり、自分でも『共感的コミュニケーション』という本を書いたり、またいまも書きつづけたりしている。

表現活動に欠かせないものといえば、すでに書いたようにマインドフルネスがある。
そしてこれはNVCでも重要視されていることで、両者は切っても切れない関係にある。
このふたつは健康——とくにこころの健康にとって重要な役割を果たしている。
私が日々、いきいきと楽しく活動できているのは、これらのおかげといってもいい。

健康といえば、身体的健康に寄与している重要なものがある。
それは現代朗読の活動からスピンアウトした音読療法という方法だ。
これもまた、いま現在の私の活動の柱のひとつになっている大切なものだ。