監督はブノワ・ジャコで、テレビ・ドキュメンタリーを多く手がけている人らしいですが、私はまったく知らなかったです。
主演はレア・セドゥという若い女優で、なんとなく見覚えがあるなあと思っていたら、「ミッション・インポシブル」や「007」などのメジャーハリウッド映画にも出演しているらしい。
いろいろな賞にノミネートされたり、受賞したりと、話題の女優のようです。
なるほど、なかなか存在感のある演技で、この映画ではフランス革命直前のマリー・アントワネットの「朗読係」という役を演じてます。
朗読係などという仕事があったのかどうか知りませんが、設定としてはおもしろいのです。
2002年にフェミナ賞を受賞したシャンタル・トマの小説『王妃に別れをつげて』が原作らしいんですが、設定や話運びはたしかにいかにも小説っぽい。
マリー・アントワネットという王妃に象徴される人間のパワーゲームの頂点にいる贅を極めた世界を、一介の下級使用人の目から見ている視点と、そこにひたひたと迫りくる民衆の血なまこに満ちた怒りがないまぜになって、ドラマチックな映像が造りあげられています。
ストーリー性というより、この時代のひょっとしてあったかもしれない空気感、緊迫感、貴族とはいえしょせん生身の人間の大衆やおびえのにおいといったものが、めいっぱい画面に詰めこまれていて、ちょっとうざったい感じすらあります。
エンディングはあっけなく、結局なにがいいたかったんだ、といういらだちのような感情が残るんですが、そこからなにかを逆に突きつけられるような気もします。
それを狙っていたとすることは買いかぶりすぎだと思いますが、なんとなく印象に残ってしまう映画であることは否定できません。
◎音楽瞑想コンサート@明大前キッドギャラリー(9.18)
ともに深く、音、静寂、ピアノの即興演奏、そして空間とご自分の存在そのものをあじわうこと。ご来場いただいたみなさんにある種の「体験」を提供する試みです。17時半開場、18時スタート。