まだ国立には知り合いがあまりいないんですが、この種まきプロジェクトには国立から羽根木みつばち部に参加されている前田せつ子さんがいらして、そんなこともあってうちから徒歩20分以上の福祉会館まで行ってきました。
監督は古居みずえという方で、ほとんど全編をひとりで取材・撮影したのではないかと想像します。
パレスチナの女性や子どもたちに焦点をあてた映画を撮りつづけてきた方として有名なようです。
私は残念ながらまだ観たことがありません。
「母ちゃんたち」とタイトルにありますが、映画ではほとんどひとりの女性にスポットがあてられています。
菅野榮子さんという方で、当時79歳。
現在もお元気だということですが、81歳は超えていますね。
榮子さんは飯館村で農業をやりながら暮らしていたんですが、原発事故のあと住めなくなって仮設住宅に移りました。
それでも畑仕事をやりつづけるのです。
彼女には親戚の菅野芳子さんという友人がいて、このふたりの友情が映画の軸となっています。
ことばでは説明できない長年の友情について、映画では雄弁に語られて(描写されて)います。
友情のほかにも、家族について、ふるさとについて、農業について、自然について、ことばすくなではあるのに雄弁に語られていきます。
とてもつらく苦しい立場に置かれた人の視線をとおして、それを補助線のようにして豊かなものが、あるいは失ってしまった豊かさが語られていきます。
古居監督はなにかを声高に主張するのではなく、ただそこに寄り添い、見守るという位置に自分を置くことで、豊かさを映画で提示することに成功しているように感じます。
そして特筆すべきは、榮子さんの生きる力です。
80にならんとする女性がひとりで畑をたがやし、おどろくほどたくさんの作物を育て、収穫し、始末し、そして最後には料理する。
たとえたったひとりの食卓でも、彼女は手を抜かずに料理して、びっくりするほどのおかずが並ぶのです。
耕し、育て、作り、食べる。
それらをあまさずやり抜くことで、生きる力を獲得しているのだ、ということが伝わってきます。
現代生活を送っているわれわれの多くが失ってしまっている力です。
しかし、それは取りもどすことができるのだ、というメッセージを、映画を観る者は榮子さんから受け取ります。
けっして派手な映画ではありませんが、じわりと心に残る映画で、そしてきっと長く忘れられない映画でもあることでしょう。
機会があればみなさんもご覧ください。
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