2016年9月15日木曜日

村山槐多生誕120年に寄せて

あまり知られてはいないかもしれませんが、村山槐多という夭折の画家がいました。
1896年9月15日生まれですから、ちょうど生誕120年にあたります。

私が彼のことを知ったのは、明大前の〈キッド・アイラック・アート・ホール〉がきっかけです。
そもそも、コンクリート打ちっ放しの、ちょっととっつきにくいたたずまいのホールの前を、なにかの用事でたまに通りかかるとき、そこに貼りだされている「今日のイベント」的なポスターが有名なバイオリニストだったり、高名な作家のトークイベントだったり、コンテンポラリーダンスのライブだったりしていて、いつか自分もこういうホールでなにかやれるといいなあ、と思っていたのでした。

その地下に〈ブックカフェ槐多〉という喫茶店があって、そこは当時、日中ほとんど閉まっていたんですが、そこでも朗読会のような催しをやることがあるということを知りました。
ホールは敷居が高いけれど、カフェのほうならやや気楽になにかやれるんじゃないか、と思って、相談したのがきっかけでした。

その結果、2012年の2月20日(槐多の命日)に最初の「槐多朗読」という、私のなかでは「沈黙の朗読」シリーズに位置づけられる連続の朗読会を、野々宮卯妙とともにスタートすることになったのです。

店には小型のシンセサイザーを持ちこみ、音をつけました。
朗読テキストは村山槐多の詩や小説を中心に、私のオリジナルで縫いあわせるような形で構成しました。
槐多はかなり多くの文章の創作を残しているのです。
とても表現欲求の強い人だったんでしょう。
そしてそのどれもが、熱くこちらに訴えかけてくるエネルギーを持っています。

「槐多朗読」はキッド・ホールの好意で隔月ペースで1年半にわたって継続されました。
この経験は私にとって大きなものとなっています。

その間にメインのホールのほうで現代朗読の「キッズ・イン・ザ・ダーク」シリーズの公演も何回かおこないました。
待望のホール公演です。
また、カルメン・マキさんとの公演や、自主公演もいくつかやらせていただきました。
槐多朗読がなければ、いずれもありえなかったものでしょう。

出会いもありました。
画家の内村水美さんは、村山槐多をとても大切に思っておられる方で、槐多について多くのことを教えていただきました。
水美さん自身の展覧会にもうかがわせていただきました。
多くの刺激をいただきました。

9月15日が槐多の誕生日であるということを思い出させてくれるメールを水美さんからいただきました。
いっしょに槐多の誕生日をお祝いしたいと思います。

「沈黙の朗読」はさらに発展して、昨年のはじめにキッド・ホールの上のギャラリーにピアノが設置されたことをきっかけに、生ピアノを使った音楽と朗読のライブとしてあらたにスタートしました。
それが、「沈黙[朗読X音楽]瞑想」コンサートです。
沈黙の朗読と音楽瞑想をひとつのプログラムとして合体させています。

これはなかなか興味を持っていただくのが難しいのですが、実際に体験していただくのが一番いいとしかいいようがない、体験型コンサートだと思っています。
演奏者、朗読者、聴衆が、ひとつの空間と時間を共有し、共感的につながりあう体験を提供します。
その核となるのが、朗読であり、即興音楽であり、そして沈黙です。

ところで、残念な知らせが舞いこんできました。
キッド・アイラック・アート・ホールが年内をもって閉館するというのです。
どうやらこれは事実のようです。
私はできるだけ限りある機会をとらえ、これまでの試みをさらに結実させたいと思っています。

まずは18日(日)におこなう音楽瞑想関連のふたつのイベントに、どうぞお越しください。

音楽瞑想ワークショップ@明大前キッドギャラリー(9.18)
ここ数年「音楽瞑想」として結実させたワークを、よりわかりやすく楽しめる形でみなさんとシェアします。深く自分自身の身体とこころにつながる体験を提供します。年内閉館が決まった明大前キッド・アイラックにて。

音楽瞑想コンサート@明大前キッドギャラリー(9.18)
ともに深く、音、静寂、ピアノの即興演奏、そして空間とご自分の存在そのものをあじわうこと。ご来場いただいたみなさんにある種の「体験」を提供する試みです。17時半開場、18時スタート。